「政宗くん、ほら、あれあれ!」 「え、ジェットコースター乗りたいのかよ」 「怖い?」 「お前こそ、怖いんじゃねーの?」 あれから2ヶ月ほど経ったか。 俺と○○は友達のような恋人のような不思議な関係になっていた。 俺は、○○に好意を抱いていた。でもそれを言い出せずにいる。 ○○は俺の中の『俺』を消してしまおうとはせず、その狂暴的な性格をなんとかしようと献身的に尽くしてくれるが、『俺』はそれを受け入れずに殴り飛ばしたり犯そうとしたりする。 それが申し訳なくて思いを伝える気になれない。 それにこれは、○○からすれば『過去の清算』でしかない。 俺に対しての罪悪感はあっても、恋愛感情なんかはないだろう。 「怖くないよ」 「はいはい。じゃぁ乗るか?」 「うんっ」 無邪気に笑う○○に着いていく俺。多分周りから見たら恋人同士に見えるだろう。 それだけでなんとなく、幸せだった。 「こっ…怖かった…」 「やっぱ怖いんじゃねーか」 「でも好きなんだよね、絶叫マシーン」 ○○はアイスクリームが売っているワゴンを指差して「食べよう!」言って俺の手を握った。 「ちょっ…」 手を握られたのが少し恥ずかしくて思わず振り払いそうになったが、真っ直ぐワゴン目指して歩き出す○○を見てそれをやめた。 夕方。 ○○が「観覧車乗りたい」と再び俺の手を引いて歩き出した。 観覧車見える夕日がかなり綺麗、らしい。 観覧車の前には少し列ができていた。カップルばかりで少し緊張する。 「政宗くん?」 「ん、ああ、どうした?」 「政宗くんこそ、ボーッとしちゃってさ」 「なんでもない。ほら、順番回ってきたぜ」 ○○の背を軽く押して観覧車に乗せ、俺も乗り込む。 ゆっくりゆっくり上昇していくなか、○○は落ち着かなさそうに上ばかりを気にしている。 「まだまだてっぺんには着かねーよ」 「わかってるよ。ただ、ここの観覧車のてっぺんで願い事したら叶うって聞いたからさ」 そんなメルヘンなこと信じてるのか。そう思うと笑みがこぼれた。 「笑わないでよ!」 「だってさ、それ最高でも中学生ぐらいまでだろ?信じるの」 「うるさいっ!」 てっぺんが近づいてきた。 願い事か。 俺も、してみようかな。 叶うなんて信じてない。でも、願い事をすれば何か一歩踏み出す勇気というか、きっかけというか、そういうものができる気がした。 . |