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□俺様会長との生活 前編
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某大企業の社長令息、伊達政宗様のメイドである私の一日の始まりは、彼を起こしに行くことからはじまる。

顔を洗い、寝癖を直してメイド服(やたらミニ丈。これで起こしに来るよう『命令』されてる)に着替えたら政宗様の部屋へと向かった。

「失礼します」

ドアを開けると、ベッドの上には政宗様。まぁ、当然だけど。
ゆっくりと近づき寝顔を見てみる。寝ている時は『おとなしい』し、綺麗な顔だなぁなんて思うわけだけど、起こした後が問題だ。

「政宗様、朝ですよ。起きてください」

「ん……」

もぞもぞと布団にくるまる政宗様。いつものパターン。以前、無理矢理布団を奪い取ろうとしたら布団の中に引きずりこまれて胸を揉まれたことがある。
無理に起こさず、ある程度の距離を置くというか、逃げ腰状態で政宗様の体をゆすった。

「おー…Good morning…ふぁぁぁ」

すると政宗様はゆっくり体を起こして大きなあくびをする。

よかった、今日は何もされない。

政宗様が起きたことを片倉さんに報告しようと彼に背を向けた、が。

「Wait…○○、挨拶はなしか?」

「……おはようございます」

しまった。何もされない安心感から挨拶をすることをつい忘れてしまった。
ゆっくり政宗様の方を振り返ると、明らかによからぬことを考えている顔をしている。

「Come on」

「……」

言われるがまま、ゆっくり政宗様に近寄ると腕をつかまれ布団の中に引きずりこまれた。
私の首元に顔を埋めると、ゆっくりと舌を這わされて体が震える。

「いつも良い匂いするな…」

「っ…ん…政宗様っ…学校があるので、急いで、準備してくださいっ…!」

「Don't worry.小十郎に送らせればいい」

「きゃぁっ!?」

胸をわしづかみしされたかと思うと、絶妙な力で揉みしだかれて思わず声を上げてしまう。
その直後、片倉様が部屋に飛び込んできた。

「政宗様!!朝から何をされているのですか!」

「チッ…だからいつも声出すなっつってんのによぉ…」

大体、毎朝こんなことの繰り返しだ。


政宗様から開放された私はメイド服から制服に着替えて、ダイニングへ向かうと美味しそうな朝食が並んでいた。

「○○も早く食べろよ。乗せてってやるから」

片倉さんがそう言って微笑む。片倉さんは政宗様のお目付け役というか、保護者というか、よくわかんないけどそんな感じでつまりは私の上司にあたる。なのに、朝はいつも私の朝食まで作ってくれる。本当にありがたい。

「政宗様が世話になってるからな。給料含めてこれぐらいは当然だ」

「No!俺が世話してやってんだ」

「朝から襲い掛かるのが『世話』ですか」

「……」

政宗様は片倉さんに指摘されたことに関して言い返せないようで、それをごまかすようにご飯をかきこんだ。




「すいません、片倉さん。送ってもらって…ありがとうございます」

「かまわねぇよ。それより、政宗様がなんかやらかしたら報告頼む」

「ああ、はい」

「Hey!○○、行くぞ」

「はいはい…」

走り去る片倉さんの車を見送り、先に歩いていってしまう政宗様を追いかける。
校舎へと向かう途中の女子生徒からの視線が、正直痛い。政宗様は見た目がいいし、今流行り(?)の『オラオラ』『俺様』タイプだ。多分、ここにいる女子に私の仕事を譲ると言ったら…それなりにいい値段をつけれるんじゃないかと思う。

「余所見してんじゃねーぞ、Honey?」

「はっ…ハニーって…」

腕をつかまれ、校舎に引きずり込まれる。
上履きに履き替えていると、同じクラスの真田くんと猿飛くんが登校してきた。

「おー、○○ちゃん。おはよー」

「おはよう、猿飛くん」

「××殿!おはようございまする!」

「おはよう、真田くん」

真田くんは何故か昔の人みたいな話し方をする。なんかよくわかんないけど、家が名家らしくて、猿飛くんの家は代々真田家にに仕えているらしい。
今はただの幼馴染みみたいな仲らしいけど…

「真田の旦那、その古くさい言葉やめたら?」

人を『〜の旦那』って呼ぶのも古くさくないかな?

「oh、幸村に猿じゃねーか。my honeyにちょっかい出すんじゃねーぞ」

政宗様は現代的というより遥か先をいってるような英単語混じりの話し方。どうもクセの強い人が私の周りには多い気がする。

「竜の旦那のもんに手出す奴なんか、まぁいませんよ」

猿飛くんがニヤニヤしながら私を見る。

今年、この学校に入学するため上京してすぐ政宗様の家で住み込みメイドとして働いているわけだけど、入学する前から私は学校で有名人だった。
俺様生徒会長のメイドが入学……『メイド』なんて言い方するから特別に聞こえるんだよ。家事手伝いならまだましだったかもしれないのに。
『メイドさーん』と同級生からは冷やかされ、先輩からの好奇の眼差しにさらされ、同性からの血が出そうなくらい痛い目線を浴びて、とても楽しい青春を送れるような状況ではない。

「はぁ……『政宗先輩』、私は教室に行くので失礼します」

考えれるだけじゃどうにもならない状況だとわかってはいても考え込んで泥沼に足を突っ込み、政宗様の顔を見ればどんどんその沼に沈んでいく。
私は一礼してその場を離れようとした、が

「No,『政宗様』だ」

学校でそんな風に呼べるわけないじゃん。まぁ、これも毎朝のお約束なんだけどね。





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