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□お友達と一緒
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コンビニの前でケータイの電話帳とにらめっこする。
かすがちゃんは集まりの前に今日雑誌の撮影だって言ってたから疲れてるだろうな。
私は慶次くんに電話をかけた。

『もしもーし、どうしたの?』

「あ、ごめんね。寝てた?」

『起きてる起きてる』

「そっか……」

慶次くんの元気な声聞いてたら涙が溢れてきた。

『あれ、今外にいるの?車の音聞こえたけど』

「うんっ…。慶次くん、もぉ…私メイドやめたいよぉ…」

『ちょっ…大丈夫か?そっち行くから場所教えて』

私は慶次くんにコンビニの場所を伝えて電話を切った。

数分後、慶次くんと何故か真田くんと猿飛くんも来た。慶次くん宅に泊まっていたようだ。

近くのファミレスに入ってテーブルにつくと、猿飛くんが口を開いた。

「で、竜の旦那となんかあったわけ?」

「うん…」

私はさっきの出来事を、できるだけ間接的だが何があったかはわかるように話した。

「はっはは破廉恥でござるぅぅっ!」

「旦那、落ち着いて」

「それはちょっと酷いだろ…」

真田くんは顔を真っ赤にしながらいつのまにか注文していたパフェをスプーンで激しくかき混ぜていた。猿飛くんはそれを止めさせようとせわしなく動く手を掴む。
慶次くんは拳を強く握りしめて眉間にしわを寄せている。

「私…政宗様が何考えてるのかわからなくて…怖いよ…」

そう言った瞬間、ケータイが鳴る。ディスプレイには片倉さんと表示されているが、政宗様が片倉さんのケータイでかけてるかと思って怖くて出れない。

「○○、ケータイ貸してみな」

「慶次くん…」

慶次くんは私からケータイをとると通話ボタンを押して耳にあてた。

「大丈夫、会長さんじゃないよ」

「わ、わかった…。もしもし」

『○○か?』

電話の向こうから聞こえてきたのは片倉さんの声だった。

「片倉さん…ごめんなさい、私…」

『いや、あの二人が悪い。今散々説教したんだが…うん、反省してないしな』

やっぱり…。

『今日は帰ってきたくねーだろ?マンションの近くのホテルの空いてる部屋、とったからそこ使え』

片倉さんは部屋の番号を告げると「悪かったな」と言って電話を切った。

「誰からー?」

猿飛くんが未だガタガタと震える真田くんの手を抑えながら聞いてきたから、片倉さんのことを説明した。

「で、あのマンションの近くのホテルの部屋とったと…」

「竜の旦那のマンションの近くのホテルって高級ホテルだろ?」

「高級ホテルとは…一体どんなものなのでござろうか」

三人は高級ホテルに興味津々のようだ。






「すげーじゃん!夜景も綺麗に見えるしさぁ、最高だな」

「佐助、広すぎて落ち着かないんだが…」

「旦那の家の居間よりは狭いでしょ」

私は片倉さんに、あと三人連れていってはダメかと言うとホテル側に相当無理を言ってくれたらしく(元々予約してないし、チェックインの時間はとっくにすぎてるし)OKをもらえた。
慶次くんは大きな窓から夜景を一望し、佐助くんはあちこちウロウロする真田くんに苦笑いしている。
やっぱ、こんな大きな部屋に一人だと寂しいし一緒に来てもらって正解だったかな。
私はソファーに座ってはしゃぐ三人を見ていると、慶次くんが向かいのベッドに腰かけて手を上げた。そして

「よし!今日は鬱憤が溜まってるであろう○○ちゃんの愚痴大会しようか」

と笑顔で言った。
佐助くんはかなりのり気のようで、私の隣に座ると

「学校とかでは愚痴れないから、ここで話しちゃいなよ」

と笑顔で言ってきた。

確かに、学校で話したら絶対政宗様の耳に入るし。雇い主の家で愚痴なんてもってのほかだし。

真田くんは慶次くんの隣に座って「話すだけでもスッキリすることもある」と笑った。

私は一度深呼吸してから、ずーーっと溜め続けていた鬱憤を言葉にして三人に話始めた。






――小十郎視点


○○は学校の友人と一緒にいる、という話を政宗様にしたところ政宗様はしつこく誰と一緒なんだと聞いてきた。
長曾我部のぼっちゃんが客室で寝静まった今も、政宗様はソファに座って俺からの回答を待っているようだが、俺は名前まで聞いてない(聞いたところで誰かわからないし)。

「小十郎、頼むから○○が何処で誰といるのか教えろ」

「政宗様、今日は一人で頭を冷やされよ。あんなことして、○○がどれだけ傷付いたかちゃんとお考えになられましたか?」

「Why? ○○は俺のHoneyだ。俺のもんだ。好きに扱って何が悪い」

どうやら全く反省していないようだ。
○○に好意を抱いているのに、それを正直な言葉で表現するという段階をすっ飛ばしてしまうのは、多分愛情に飢えながら育ったせいだろうと思う。
はやる気持ちを抑えきれずに行動に移してしまうのだろう、あくまで推論だが。

「○○にも感情があるんです。メイドをやめて欲しくないなら、きちんと反省してきちんと謝る。それができないなら、もう○○は帰ってこないでしょう」

俺がそう言うと政宗様はソファの前のテーブルの上にあったコーヒーの入っているマグカップを掴み、一気に飲み干すとそれをテーブルに叩きつけた。ガシャン、とマグカップの割れる音がする。

「....What? ○○が帰ってこない?ふざけんな!」

「ふざけてはおりません」

「いーや、ふざけてるな。あー、頭の中がぐちゃぐちゃだ。………小十郎、○○の友達の話に戻っていいか」

「どうぞ」

「○○の学校の友達っつったら、今のとこ女一人と男三人しかいねーんだよ…。俺の知らない所で、俺以外の男といるなんて…」

深刻そうに頭を抱える政宗様。
俺はリビングから出て○○のケータイに電話をかけた。

こちらが悪いとはいえ、あれだけ不安定になってる政宗様を見ているのは、正直辛い。










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