もうやめろよ。 痛みつけられる苦しさは俺が一番わかってるんだ。 わかってるから、何も考えてなかった奴等を潰していて楽しかったんだ。 今は違うだろ。 目の前の、この人は。 自分のしたことを悔い、反省しているじゃないか。 「……ごめん」 「え…?」 俺は極力××○○の裸を見ないようにしながら手を拘束していた服を解いてクローゼットからスウェットを出して渡した。 「家のシャワー、使って。服はしわ伸ばしとくから…それまでそれ着てていいし」 ××○○は俺を見てポカンとしている。 当然だろう、まるで別人、というかまぁ、別人なんだけど。 「…シャワーまで案内するから。とりあえずくるまれるタオル持ってく」 「待って…」 部屋から出て行こうとすると、××○○が服のすそを掴んできた。 「わからない。気になるの、どの伊達くんが…伊達くんなの?」 ××○○は自分で何を言ってるのかよくわからなくなったのか軽く首を傾げた。 俺はしゃがんで××○○の顔を真っ直ぐ見た。 「俺が、俺だよ。あんたの知ってる俺だ」 そう言うと、あんな酷いことをした奴に対して向けるものとは思えないような安心しきった笑みを見せた。 「だよね、そうだよね…」 すぅ、と深呼吸をすると俯いて 「ごめんなさい」 と呟いた。 「もういい。わかってるから。それより、俺のが謝らないと…」 「いいよ。確かに酷いことされたけど、それだけ酷いことしたってことだと思うから…」 ××○○はそう言うと顔を上げて俺を見た。 綺麗な顔。 そう思った。 そういえば、××○○は小学生の頃はいわゆるマドンナ的な扱いだったな。 俺はいじめられてたから、憧れは抱かなかったけど。 「目は、もう治ったの?」 「ん、あ、あぁ。でも、歪んでてひでーことになってるから隠してる」 「そうなんだ…。でもよかったよ、治ってて。いじめてた私が言うのも変だよね」 そこで一旦会話が途切れた。 俺はふと、『俺』がひっぱたいた××○○の頬に目をやる。腫れるまではいかないが、赤くなっていた。 「大丈夫か、それ」 頬を指差すと、××○○は「大丈夫」と笑ってみせた。 俺もつられてふっと笑った。 それから××○○を風呂に入れた。 小十郎には正直にわけを説明した。酷く怒鳴られたが『俺』を知ってる小十郎は「自制できるようになられてください」と言って、お詫びとして出すケーキかなんかを買いに出かけて行った。 数分後、××○○がスウェットを着て風呂から出てきた。 「お風呂ありがとう」 「いや、それぐらい当たり前というか…。ひでーことしたし」 「…伊達くんじゃないよ、酷いことしたのは」 「え?」 ××○○は何もかもわかっているような口振りだ。 「確信はないんだけどね。ただ、違うと思った。元親さんも『たまに人が変わる』って言ってたし」 「…おかしいだろ?自分でも自分がおかしいってわかってるんだけどな…」 俺がそう言うと、××○○はゆっくり首を横に振った。 「伊達くんをそんな風にしたのは、私たちだから。伊達くんは悪くないし、おかしくないよ」 ××○○は真剣な表情で俺を見つめた。 「伊達くんを、これ以上苦しめないのが私の本当の意味の『清算』だと思うの」 |