Kiri

□Kunzite
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この天才は、どこまでも天才肌らしい。

驚くほど器用で、何でも出来てしまって、完璧主義。探究心も半端でなく強い。

だからって…。




「レジーナ…」


ぃゃ、辞めてくれないかしら。
その声で囁かれると、本当に弱いのよ。
それを知っていて、ワザとそうしているだろうことは、私を見る悪戯な瞳で分かる。

私の方はきっと、耳まで紅い。

伸びてくる腕を、私は内心必死に押し留めた。
途端に不機嫌を露わに、彼はもう一度腕を伸ばす。

「エリック」

伸びてくる腕をもう一度押し返し、咎める。そんなことに、怯む相手では無いと分かってはいるんだけど。

「私に抱かれたくないと?」

なんてハッキリ言うのかしら。

私だって女だ。
だから、人並みに好きな人と素肌で抱き合いたいという欲はあるし、欲しいとも想う。だけど、それだけだと本当に彼は私を好きなの?って想ったりするじゃないの。


先日、私達は遂にそういう関係まで至ったわけなのだ。


それ自体はまぁ、喜ばしいことだと思う。でもね、問題はそこから。それからというもの、エリックはことあるごとに私を抱く。なんてゆうか、逢えばお決まりの如くにね。嫌なわけじゃない。彼の愛が伝わってくるなとも思う。

でも…流石にねぇ。

ほら、男って心と躯は別って言ったりするでしょう?


「私がもし、エリックに抱かれなくなったら、貴方は私に愛想を尽かすかしら。」

私が言った一言に、彼の片方の眉がつり上がった。気に食わないといった風だ。

「何が気に食わないんだ?」

トーンを落とした問い。
嫌なわけじゃない。むしろ、そう、この天才は…そっち方面でも持ち前の器用さを発揮していて、抱かれれば抱かれるほど深みに嵌っていく気がする。囁かれれば熱くなって、容赦のない愛撫が、一寸も間違わず私を追い詰めていく。そうして、今まで知らなかった高みに追いやられるのだ。

こんなのじゃあ、ダメだと真剣に思うの。
どんどん彼に染められていく躯を、自分でどうしていいか分からない。

彼は、どうなのだろう。
私を抱いていて…そんな風に想っているのかしら。

毎回していては、飽きられたらどうしようという不安があるのだ。
だから、簡単に彼の誘惑に墜ちるわけにはいかない。

「お茶にしましょう。」

私は誤魔化すように、そう言ってキッチンに向かおうとした。
でも、当然、相手は納得していなくて。

「レジーナ」

だから、その囁きは駄目なのよ。
私を行かせまいとして手を引いてきたその手は熱く、繊細な仕草で手の甲をなぞる。指先に落ちてくるキスは私の躯に確実に火を点けた。
抵抗出来ない私に気を良くしたのか、腰に回った腕が私を抱き寄せる。

もう一度名前を呼ばれて、耳の後ろを口唇が這った。そうされると肌が粟立ち、弱い部分を吸われると途端に私の躯は仰け反る。
結局、好きなのだから、確固たる決心をしようとも触れられれば感じてしまうわけなのだ。情けない…。

「…ズルいわ。」

私の囁きに、ドレスを剥がしていた手が止まる。

「狡い?何が?」

「いつも私ばっかり…追い詰められて、感じて。貴方はいっつも余裕そうなんだもの。」

私が不機嫌にそう言うと、エリックは驚いた顔をした。それから苦笑する。口唇にキスが一つ落ちてきた。

「私は、いつも必死だよ。腕の中の人を捕まえていることに…どうすれば、私無しでは居られない様に出来るかとね。」

悪戯な口唇は、甘い言葉と、愛撫を私に与える。
晒された肌の上を、天才の指先が音楽でも奏でるかの如くさらりと私の上を這う。そうすると情熱と官能が呼び覚まされて、知らず彼を受け入れたくなって…甘美な疼きを感じる。彼の肌に触れて、私を抱く躯の感触を確かめると、肩から胸元に、腹筋をなぞって、下へ。指を絡めて、私はその躯を見つめる。

「エリック」

彼がいつもそうするように、私もその耳元に名前を吹き込んでみた。途端、私の奥に忍び込んだ指が急性に私を追い立てる。過ぎる快感に、ついてゆけなくなりそう。

縋りついて、彼の肩口のシャツに噛みつく。そうでもしないと、上がる声を抑えられない。それに気付いたらしく、いつの間にかシャツは彼の躯から離れ、私の口唇は指先で開かれる。

「声を…、レジーナ。」

「ぃや…」

「聞かせてくれ…」

改めて、聞かせてと言われてもそんなのは無理で。厭々をするように頭を振れば、また奥を抉られ、抑えきれない喘ぎが一つ漏れた。自分のものとは思えない声に、もう一度唇を噛みしめようとしても、彼の指が口内に差し込まれる。大事な指を噛んではいけないから、私には抑える術がない。愛撫に反応してしまう声を聴かれてしまうのだ。

「それでいい。もっと啼いて。」

私に声を上げさせて満足しているらしいこの人が憎らしくなった。

「エリッ、ク。欲しいわ…」

私は、ワザと普段は滅多に言わないとっておきのセリフの一つを口にした。そうすると、彼の瞳に宿る官能が一層濃くなる。驚きながら、どこか満足そうに、嬉しそうに私の膝を割り開いた彼が、重なってきた。腕を伸ばして抱きしめ、彼の重みを受け止める。躯の奥でぴたりと合わさって、一つになる。意識して奥を締めると、苦しげな声が耳元に漏れて、私はとっても満足した。私も、彼の快感を支配できるのだ・・・・陶酔の時を。

結局、私に煽られたエリックにわけがわからなくさせられて。気絶するかのように、いつの間にか意識が遠のいていた。










「ズルい」

「だから、何が?」

ふんわりとした枕の上に、うつ伏せで半ば身を乗り上げながら不貞腐れた私。素肌にかかるブランケットの感触はとても心地よいけれど。ちらりと横目で、私の不機嫌を作り出した本人を見やる。

「…なんでもないわ」

いつも、私のほうが夢中だからおもしろくないと言おうとしたけれど、それをいうのもおもしろくない。だから、まだ言ってやらない。

「そうそう、明日から一週間、兄さんとイタリアへ行くから。お土産は何がいいかしら?」

「何?」

それで気づいたのだけれど、私が来なければ禁欲生活になるのよね、きっと。たまには、そういうのもいいでしょう。

そう思っていたらいつの間にか、私の躯は反転して…仰向けになっていて。

「一週間か…なら、その分前倒しだ」

「えっ…、ちょっと!」

そうして、もう一度彼の情熱を受け止める羽目になった私なのだ。




end



***


1000HITきゃさりん様のリクで「甘裏」ネタだったわけなのですが。

なんか、とりとめのない話;
いや、エリックはとっても懲り性っぽいので、ヒロインの躯を探りたくてしょうがない的なあほなネタです。すみません・・・。

Kunzite…クンツァイトは、他人への愛情を注ぐことを教えてくれる石といういわれがあるらしいです。過去の愛に関するトラウマも緩和してくれるとか。エリックにぴったり!?

なにがともあれ。

きゃさりん様、リクありがとうございました!




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