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□Welcome to Christmas
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カラン、と音を立ててドアを開く。
「いらっしゃい、エリック。」
マスターが料理を仕上げながら、私に挨拶をしてくれたので、私も返す。奥からは妹のケルシーがやってきて、珈琲を淹れてくれた。
「レジーナなら、もうすぐ戻ってくるわ。」
彼女を視線で探した私を見逃さず、クスリと笑いながら、ケルシーが言った。
店内には煌びやかな装飾がされていて、ツリーもキラキラと輝いている。チキンがローストされた香ばしい香りも漂い、ホリデーの雰囲気だ。
そう、今日はクリスマスイブ。
レジーナが知り合ったこのカフェの兄妹は私を怖れたりしない。ケルシーの歌は好きだし、私も音楽家だから、今宵はそんな話が出来ればなどと思ってもいた。
夢見ていた、普通の幸福なクリスマス。
それがこうして我が身に現実としてやってくるとは思ってなかった。イブはパーティー、そして明日は二人で。
「エリック、来てたのね。」
カラン、と音がしてレジーナがやってきた。
両手にケーキを持っている。
それをキッチンの大きな冷蔵庫に入れると、ケルシー達を手伝い始めた。
私は何も役には立てそうにないので、そのままカウンターで珈琲を頂いている間に、ピエールやクリスティーヌ、ラウルがやってきた。
「メリークリスマス」
挨拶を交わして、レジーに促されるままに私が三人を中に案内した。
「さぁ、始めましょう」
レジーナやマスターが料理をテーブルに運ぶとパーティーの始まりだ。
シャンパンやジュースを開けて、グラスに注ぐ。
「「メリークリスマス!!」」
カチンとグラスの合わさる音。
あぁ、これがクリスマスというものなのか。
クリスマスツリーがキラキラと一層輝いて、幸せな笑顔が溢れている。レジーナに無意識に視線をやると目があって、彼女が微笑んでくれた。
グラスを持っていない方の手にそっと彼女の手が触れる。温かな体温が伝わってきて、急に胸が熱くなった。
「メリークリスマス、エリック」
囁かれた声に頷けば、一層クリスマスが好きになれる気がした。
続く?
***
遅くなりすぎですが。
クリスマスイベント「キャンドルリフレクションズ」から。