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□コード・ブルーU
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いつも思うけど、先生の家って独り暮らしのくせに結構広い。

病院に近いこの立地は、忙しい医者という職業には必須だろう。

まだ帰ってくるまでには時間がありそうだから、パソコンを開けて、何冊かの本を出して、レポートをすることにした。この部屋には勉強が似合う気がする。医者になるのはやっぱり先生も沢山勉強しただろうし、本棚にはよくわからない難しそうな本が並んでいる。

遠くでヘリの音が聞こえるような気がして、そうしたら帰りも遅いのかなあなんて考えながら、レポートに取りかかった。



「ただいま」



思ったよりは早く、名前先生が帰ってきた。

「お帰り、もっと遅いかと思ってた」

「今日はそんなに患者が居なかったから」

「でも、ヘリ飛んでなかった?」

「ヘリ当番じゃなかったし、なんとか無事だったの」

スーパーの袋をキッチンに置きながら、雑談。夕飯のメニューなんだろうなとカウンターキッチンを挟んで会話しながら食材を眺めた。

「クリームシチューでいい?」

「うん」

僕の視線に気づいて、メニューを告げてくれる。それに頷きながら。


こんな関係になれるなんて、思っても見なかったから、しみじみと幸せを感じていた。
憧れだった人が、今は僕の恋人だ。


「これからだから、レポートの続きしてたら?」


パソコンと広げられた本を視線で示して、僕を促す。はあい、と大人しく返事をしたら、パソコンの前に座り直して本を開いた。でも実際は料理を進める先生の姿を眺めて、全然進まない。滅多に見ることができないそんな姿を見ずに終われるわけがない。

一生懸命料理をしているのを見つめていたら目があって、笑いかけてくれる。

「レポート進んでないでしょ」

煮込みのタイマーをかけたら、一度こちらに来てくれた。
僕の側で手近にあった心理学の本を持ち上げて捲る姿を見るだけで僕は楽しくて、

「名前さん」

本から顔をあげたところにキス。
こら、って怒られながらも先生も顔は笑っていて。

「もうちょっと待ってて」

タイマーが鳴った後、仕上げたらクリームシチューが出来上がって、バケットやサラダと一緒の夕飯になった。

「お待たせ」

向かい合って座って、他愛ない話と共に食卓を囲むのもまた幸せで、僕は胸もお腹も一杯だった。



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