Short
□その他
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初の単発ヒロイン。
「クリスティーヌ、早く。」
それは珍しく朝稽古の後、メグ・ジリーがクリスティーヌを急かす声だった。
昨日のバレエの出来が今一つだったので、マダムが朝稽古を付けたのだ。2人は朝食を取るために、食堂へかけていった。珍しい光景だ。二人が朝食を食堂で取ることは滅多になかった。いつもクリスティーヌの部屋でメグが買ってきたペストリーをつまむ程度だったのだから。
「昨日頼んでおいたの。」
メグが呼んだ名前は…あぁ、最近入った新しい料理人だ。
確か支配人が、厨房に新しい料理長を呼んだと言っていたな。前の料理長は大柄で、やたら肉料理ばかり出すので寮に暮らす女性達からはかなり評判が悪かったのだ。特に舞台に立つものには不向きだった。
まだその料理人を見たことが無かったので、二人を追うついでに食堂に向かう。オペラ座内に知らない人間がいると困るからな。
「おはよう!」
「おはよう、メグ、クリスティーヌ。ちょうど朝食が出来たわよ。」
二人の前に置かれたプレートには、パンケーキとサラダ、スクランブルエッグが添えられていた。今までに出されていた朝食とは大違いだ。二人がやってくるはずだな。
…にしても。
私が驚いたのは、彼女。
料理長が女だと思わなかった。
しかも、彼女は…料理人といっても、パティシエールかショコラティエだというならまだ理解できるが、とても料理長のイメージには合わないな。
鉄のソテーパンを振る細い手首…実に不似合いだ。
メグとクリスティーヌと談笑しながら、ランチタイムの仕込みに取りかかる彼女を眺める…何故か、興味を惹かれるな。今に、ファントムの洗礼を見せてやろう。
そう考えながら、厨房を後にした。
***
ネタは管理人の日常?から。