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□O-2
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「ピーチ・メルバってデセールを知ってる?」

突然、彼女がそんな事を問いかけてきた。
生憎、私は甘いものには疎いのでね…桃を使ったデセールなのだろうが、どんなものかはまるで検討がつかない。

「すまんが、甘いものには詳しくないのだよ、知っているだろう?」

苦笑と共に返事を返す。
彼女は知らなかった事を大して気にかけた様子もなく、私に微笑む。
ティーセットをテーブルに置くと、私の前に座った。

「ちょっと作ってみようかと思うんだけど、一緒に食べてくれる?」

そう言って、小首を傾げて問いかけてきた。
この仕草、表情を前に嫌と言えるはずもない。

「構わないが…どんなデセールなんだ?」

聞くとそれは、バニラアイスに桃のコンポートが乗り、アーモンドで飾られ、最後にフランボワーズソースをかけて食すものらしい。

「メルバと言うのは人の名前なのよ。有名なシェフが、ネリー・メルバという歌姫の為に出したデセールなの。貴方も、クリスティーヌのために何か作ってみたら?」

面白そうに彼女はそう言う。
しかし、逆に私はその言葉が面白くなかった。

「お前、私が他の女性の為に、その人をイメージした菓子を作っても構わないというのか?」

「えぇ、相手がクリスティーヌなら構わないわよ。彼女、甘いものがとても好きだもの。」

菓子については大して詳しくはないが、書籍など調べればなんとかなるだろうし、料理自体は嫌いではない。
だからこそ、「私のイメージのお菓子を…」と言ってみて欲しいものだ。彼女は謙虚や控え目という表現とは何かミスマッチだが、時々こういうことを言うのだ。基本的には大胆で、思いのまま行動したり、言葉にしたりするタイプのはずなのに。

それとも、私を試しているのか?

試すまでもなく、私は彼女に溺れている。

ポットを手に取り、空いた私のカップに紅茶を注ぐ様を観察した。彼女の美しさを菓子などで表現しきれるとは到底思えないが、いつも私をやきもきさせる彼女へ、ちょっとした仕返しのつもりで提案に乗るフリをした。

「やってみようじゃないか。」

「出来たらちゃんと味見させて頂戴ね。」

微笑む彼女。

その微笑みを見ながら、私は思考を働かせ始めた。

彼女の名前を付けたデセールを出すために。


end


***


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