Short

□A-2
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かなり大人向けネタ。









「エリック」

私の住処に遠慮もなく踏み込んできた彼女は、私を認めると急性な仕草で深く唇を合わせてきた。

容赦なく剥がされた仮面と鬘、細い指先が頬を髪を愛撫してくる。
口付けの合間に、掠れた声が「エリック」と呼ぶ。
その仕草に、官能は高まってしまうのだ。


あぁ、今日は彼女の「狩り」の日だったはず。
本来なら問題なく満たされているはずの日に…相手が見つからなかった?まさか、彼女に限ってありえない。狩りの仕方など知るはずもないから、分からないが。


ただ、私はただ目の前の存在に酔わされるだけだ。

シャツを開いた指先が鎖骨を辿ったと知ったと同時に、首筋にチクリと痛みが走った。

それは一瞬で過ぎ、次の瞬間には傷痕さえ残っては居ないのだ。

「どうしてなの…」

問い掛けと言うよりは、呟きに近い。

「どれだけの血より、どんな男の血より、貴方の一滴が私の渇きを癒やすわ。なぜ…?」

私の頬を辿る指。
それを取って、彼女の一部に口付けても赦されるのだろうか。


彼女は美しき女支配者。


なんと皮肉な巡り合わせだ。

人間だけれど、化け物の様に醜い私と。
化け物だけれど、何よりも美しい彼女。


長年世界を放浪してきたが、未だ彼女の様な一族には出会ったことはなかった。
そして、本来ならば会うことなどなかったのだろう。私の住処にたどり着いたことと、私の血を彼女に分けたことは、偶然の産物に過ぎなかったのだから。本当なら私のような者を相手にしたりしないのだ。

一方通行の愛。
彼女にとって重要なのは、血がいいかどうかというだけ。そして、その男に利用価値があるかどうか、だ。だから、私の血を少しばかり気に入った彼女がたまにやってくるだけ。

「人でないもの」と繋がっている彼女は、私の素顔を何ら驚かずに見て、平気な顔をしてる。むしろ、仮面は「そういうとき」に邪魔なものでしかないとすらいう。

「そういうとき」…それは、彼女の「狩り」もしくは「食事」と呼ぶその時には。

彼女達の一族は、血を奪うために相手を高ぶらせる。

「恍惚の時、人間の血は極上に香るのよ」

私の血を奪うとき、彼女の指先が、唇が私に触れながらそう囁いた。それを受けながら、どんどんと私は「彼女が自分だけのものだったら」と想像してしまうのだ。そんなことにはならないのに…。


考えるより先に、無意識に。

彼女の頬に口づけてしまった私を、少し驚いた表情の彼女が見ていて…「すまない」と謝った。

「赦してあげる」

そういった彼女が振り返らずに住処を出ていくのを…切ない気持ちを隠しながら私は見送ったのだ。



***


という、こんなネタ;

女吸血鬼とエリック。

…て、これむっちゃ大人な話になってしまうやん、的な;

オペラ座設定ではレアではなかろうか・・・




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