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□君は僕の魚
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「結構ウマイじゃん」

まあ、メニューがメニューだから不味く作る方が難しいとはいえ、素直にここは誉めておくことにした。
それだけで、ありがと、と機嫌が直った名前も嬉しそうに食べている。

「今日はありがとう」

「なにが?」

「行きたいって水族館、覚えててくれたでしょ。忙しいのに、付き合ってくれて」

視線は俺から外したまま、そう言った。
それは単に恥ずかしがって目を合わせないだけだろう。
ほんと、どこからどこまでも、素直ってゆうか、こういうところ、ちゃんとしてて。

「彼氏ですから」

「ゆづくん、」

「なに、」

「ゆづくんが彼氏って、ほんと私すごいよね。いつも信じられない」

「なにバカなこといってんの、今さら」

その台詞も何度も聞いたし。
もうちょっと進んだ台詞で喜ばせて欲しいんだけど。いつまでもそんな、付き合って一歩進んだレベルで騒がれたらこっちがもたない。

「片付けとくから、風呂入ってきたら?」

数枚の皿を洗うくらいなら出来るし、時間は有効に使いたいからそういって、シンクに移動する。
一緒にやると言い出すのを、「名前の風呂長すぎだから、先に行きなさい」と制して、らしくなく積極的に取りかかった。
女の子の入浴って、やたら長いんだよね。まぁ、これからアレコレやるってわかってるだろうから、念入りに洗ってるんだろう。



それが、いわゆる乙女心ってやつだとおもう。



交代で入ったあと、ふかふかの素材の部屋着を着ている名前の横に座る。

「ゆづくん、こないだのテレビに出てたよ」

録画していた番組を楽しそうに見せてくれるのを見ながら、さりげなく肩に腕を回した。

「すごいね、ゆづくん」

「あのさ、」

「うん?」

「もう、スゴいとかどーでもいいから。二人でしか出来ないことしよ」

その番組は、俺が居ないとき用に置いててくれたらいい。離れてる時間が普通のカップルより多いことは分かってるつもりだから、そんなので喜んでるのはありがたいけど。

押し倒した身体から、ふかふかの部屋着を脱がしながらキスを仕掛けた。

「ぅん、ンン、ふぁっ、」

愛撫に不慣れな身体を開いてく。
あちこちにキスする度に震えたり、声を出したりするのを感じている合図にしながら、進んでいく。

「ゆづくん、恥ずかしい…」

明るい中で始まった行為に、冷静な部分が気づいたようで明かりを落としてやった。

「俺しか見てない」

冷静さをどっかに放り出して欲しくて。
敏感な部分にどんどん噛みつく。

「ぁっ、やぁっ、」

恥ずかしさにか頬をピンク色にしているところが、俺を煽っていることには気づいていないだろう。
着ていた部屋着より、俺にとってはふかふかの肌だったり、色づいた唇だったりが勝手に煽ってきて、中々上手くいかない。

「名前、も、入るから」

「ゆづくん、ゆづくんっ、」

「力抜いて…」

両手を広げてくる胸に、会わせるように重ねて身体を繋ぐ。
そういうなんてことない仕草に堪らなさを感じてしまうあたり、俺も単純なんだなって。
スケートのことなら、自分の動きを分析したり、次の持っていき方を考えられるのに、これはもうどうにもならない。本能に従うだけだ。

「ゃんっ、ゅ、づくんっっ、イイよおっ、」

ベッドの上で、俺に翻弄されて跳ねる身体を見つめながら。

「名前っ、」

その身体に、俺も翻弄されて、熱を手放した。






「ゆづくん」

腕枕に頭を預けながら、少し眠そうな声で名前が俺を呼ぶ。

「ん?」

「今日ね、水族館楽しかった」

「良かった」

「でもね、ペンギンより、何より、隣のゆづくん見てるのが一番長かったよ。ごめんね」

「それ、謝るとこなの?」

「分かんない」

「分かんないの?」

ふふ、と名前は何故か笑っていた。

「だって、ゆづくん、何してても一番カッコいいんだもん。だから、見ちゃうの。」

ご機嫌だ。
そして、好きな子に褒められて悪い気はしない。

でも、俺もペンギン諸々より、名前しか見てなかったけど、そんなことは言ってやらない。俺はそんな恥ずかしいことはぽんぽん言えないから。やっぱ、名前は素直だ。

横で丸まった身体がくっついて暖かいから、そっと眠りが訪れていた。




end


***
りりこ様のリクエストで、年下か同い年ちょっと天然ヒロインで、ぐいぐいリードする結弦さん、ラブラブなかんじ。
ということだったのですが、なんか違うような出来で謝りたいところです(汗)でも、よければお楽しみ下さい。

また、サイトに来ていただけたらうれしいです。








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