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□コード・ブルーV
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「これって、俺のため?」
「なにが?」
「ベッドがこんなおっきいの」
「元から置かれてただけよ」
ベッドルームに置かれた日本の時よりも大きいサイズのそれに、結弦はからかうように聞いてくる。
半分は嘘で、半分は本当だ。
シングルベッドは二人で眠るには狭すぎた。狭い中で寄り添って寝るのが良いなんてのは小説か歌詞の中でだけだ。
それに、相手はアスリートだから身体が資本なのだし。
一人で眠るにもホテルみたいに広いと気分がいい。だから、備え付けのベッドが大きかったことも此処にした理由のひとつ。
「ふぅん」
私の応えに少し残念そうに唇を尖らせているのを見ないようにして、さっさと布団に入った。
「怪我人は早く寝ることよ」
それだけをそっけなく伝えて、渋々反対側に入る結弦を眺めて、よし、と心の中で呟いた。
さすがに広いサイズのベットは、二人で並んでも重なることはなく快適だ。これなら、痛めた身体に負担をかけることもなく眠ることが出来るだろうと満足して目を閉じた。
それは、私だけの満足だったらしい。
「名前さん?」
隣がごそごそと動いて、私の指先を探る。せっかくの広さを詰めてきて、私の肩口に額を当ててくっついてくる感覚と、腰に回される腕の温もり。もう反対の手が、手の甲を愛撫している。
「ね、」
「寝ないと治らないわよ」
「くっつかないと治らない」
「それは医学的には立証されてないわ」
「メンタルの問題でしょ」
「身体を心配してるの」
「名前さん、こっち向いて…」
結弦が私の頬に触れてきて、そちらに少し傾いたかどうかのところで、唇が触れる。ちゅっ、と音をたてたかと思うと角度を変えて啄まれて、いつの間にか髪に差し込まれた手が引き寄せる。
「結弦、」
「だって、名前さんが抱き締めてくれた時から待てなかったんだよ」
「足が、ダメよ、」
「もう、キスしちゃったから止まんない」
そう言うと、結弦の唇が首筋を這う。
隣で寄り添ったまま、ボタンが一つ一つ外されて、その後をキスの雨が降る。
「俺さ、」
指先が、肌を滑って柔らかく胸元に下りて頂を弾いた。
「氷に乗れない時間が長かったから、足の事とか色々論文読んだりとかさ、勉強したんだ。それで、一緒に名前さんを喜ばせる方法も色々考えたよ」
「なんで、大事な時間を…そんな、どうでもいいことに、」
「俺にとっては、一緒くらい大事」
結弦の舌があちこちを濡らす。
「んんっ、ぁ」
久しぶりの刺激に、身体は応えてしまって、身体の奥が熱くなっていくのを感じた。
「名前さん、良い?」
内腿に落ちた唇に、びくりと身体が跳ねる。
次の刺激には、きっとおかしくなる予感がした。
「やっ、んー」
「名前さん、こんなだよ?」
蕩けた場所に指が分け入る。
嬉しそうな声で私を呼びながら、中の指を動かされて短く絶え間ないあえぎが漏れた。
「ねぇ、名前さん、」
結弦は、融けた顔の私を見下ろしてから、中の指をそのままに敏感な芽に舌を這わせた。熱い舌も、中もされておかしくなる。もう飛ぶ、と思った直前、刺激は止んで、閉じていた視界の向こうで結弦の声がした。
「もう、欲しい?」
目を開けたら、結弦が至近距離で意地悪に笑う。
「ゆづる、」
「そんなんじゃ、わかんない」
この聞き方は、私にどうしても言わせたい時のだ。
ちゃんと、言葉にしないと貰えそうに無くて、それに抵抗するのもバカらしくて。
「結弦が、欲しい」
「ふふっ、」
嬉しそうに笑いながら、仕方ないなぁって言いながら。
結弦の質量が私を貫いた。
「んっ、」
先に声を上げたのは結弦。
眉をきつく寄せて苦しげな顔で私を覆ってきた。
「ゆづる?」
「名前さんのなか、気持ちいい…」
その言葉に、足を結弦の腰に絡めて、もっと苦しめたくなった。
頬に触れて、私からキスしたら言葉がなくても気持ちが流れ込んでくる気がする。
「なんで笑ってるの」
「結弦が、好きでいてくれてるんだなって思って」
「ずるい。名前さんだって、俺のこと好きでしょ?」
「好きじゃなかったら、こんなことしないわ」
「ちゃんと好きって言ってよ」
ちょっとむっとした結弦の、その頬を撫でて。
「好きよ」
私が囁いたその言葉に。
結弦は、最後の理性が崩れたように私を責めてきた。
二人ともが短い喘ぎを絶え間なく漏らす中で、何度も短いキスと、好きの言葉と、名前を繰り返しながら。
息を詰めた結弦の下で、私も身体を震わせた。
「韓国入りはいつなの?」
「二週間後くらい」
「そう」
「五輪が終わったら、多分、しばらく日本に帰ると思う」
「いつものことでしょう?」
「そうだけど」
「なに?」
「ちゃんと、待っててくれる?トロントで。」
「私は、私で、トロントでやるべきことをやるだけよ」
「ズルい。メンタル大事なんだよ」
「ちゃんと、待ってるわ」
ちょっと拗ねた表情が見たいなんて内緒。
その後にちゃんと待つと伝えたら、満足そうに目が細められて。
力強い腕の中で、どうか無事に、そして結果が出ますようにと祈りを捧げた。
end