03/23の日記

22:04
一夜の。
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「ゎ、びっくりした…」


ドライヤー片手にリビングに戻ると、そこには勝手に部屋着に着替えて我が物顔で居座ってる人が居て、思わず声を上げた。

「おかえり、」

やっとのことでその言葉を絞り出して、「何か飲む?」と声をかける。

「ココア、」

そのリクエストに分かったと応えてから、キッチンに入る。
どちらかというとビターを好むわたしだけれど、ココアだけはハイカカオよりミルク多めが美味しいと思うのだから不思議なものだ。チョコレートは赤より黒だと思っていたのに、ココアだけは例外で、そこはふたりの共通点のような気がして、それはそれでいいかと思える。

「ねぇ、このタイトル、プレイしてたっけ?」

ドライヤーと一緒に置いたスマホ画面を覗いだ彼が指摘してきたのは、スマホゲーム。

「それ、割と最近始めたやつだから、まだ弱いよ」

「ふーん」

ココアの入ったマグカップを手渡しながら、この揃いのマグカップを使うのは久しぶりだな、とか、そういう気持ちが少し湧き上がった。

「面白い?」

「これ自体はそんなに、まぁ、ただの作業ゲーだから」

「そうなの?」

女子向けのゲームは結構簡単な操作のものが多いわけで、ゲーム好きの人が一生懸命やるような要素はほぼない。

単調な操作や画面を見ながら、時々ココアを飲んで、薄まったココア色をスプーンでぐるぐるかき混ぜて、その繰り返し。


わたしも、何も深掘りしないし、それがいいなら、それでいい。


数時間前のこと、祈るようにわたしも見ていた。
本人が言わないなら、聞かない。
言いたいなら、聞くけれど。


慰め合うのが良いわけじゃないし、下手な励ましや労いは分かった風に聞こえたら嫌だ。
どんなに想像してみても、彼の気持ちは良くも悪くもわからないのだから。


「お風呂、入らない?」


ココアを飲み終えて、ころんと膝の上に横になった身体。
疲れてるなら、こんなところで寝てしまってはダメだし、とりあえずそう声をかけてみて。


「もうちょっと、このまま」

「ん、」

明日はわたしは休みだし、いくらでも夜ふかしには付き合えるから、やりたいようにでいい。

「ねぇ、」

「ん?」

膝の上を見下ろすと、小さくわたしの名前を呼びながら、その声がさっきまで聞いていたはずのトーンと全く違うそれで、「キスして、」と囁くから。


身をかがめて、何ヶ月ぶりか数えられないそれを窮屈な体勢で交わした。



目を閉じたままのその顔に、見たかった笑顔が浮かんであって、わたしもなんだかほっとしていつの間にか微笑んでいた。


end

***


みなさま。
御機嫌如何でしょう?
放置してて申し訳、、や、なんのお話の神も降りてこずで更新できてなく。そうしましたら、数日前に遂に復帰戦を前にして夢に出てきまして。あ、放置だめってことだよね?!ってなったわけです。

ただ、このお話のヒロインちゃんは、まさに自分のネタでもあり、年末から人に推されたジャンルを覗いたら、あ、なんかよく出来てるって思ってしまい。空いた穴を埋める役割をしてくれてしまった形なのですが。

久々に見たお姿にまた、お話を生み出せるように努めます!






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