いちじのおはなし

□ほっとけなかった
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 季咲は自分の机でなにか描いていて、その姿が切羽詰まったみたいな、今にも泣き出してしまう寸前みたいなそんな感じに見えたから、俺は教室に入ることが出来ず、かと行って帰ることも出来ずに、コッソリと隠れて見ていた。

 本当に泣き出してしまったらどうしようかとビビりながら。

 だけど結局、季咲が泣き出すことはなく。

 彼女は陽が暮れて暗くなってしまった頃に席を立った。

 俺は慌てながらも迅速に、季咲に見付からないように隣の教室に隠れた。

 そうして足音が聞こえなくなったのを確認してから、いてもたってもいられずに、季咲の机の中を覗きこんだ。

 季咲があんなになって描いていたものが、気になって仕方なかった。

 持って返っていたら諦めるしかなかったけど、季咲が机になにかを突っ込むところを俺は見ていた。

 机の中には、一冊のスケッチブックがあった。

 躊躇いながらも手に取り、汚したり傷付けたりしないようにそぉっと開いた。
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