名夏、置き場
□『はた迷惑な男』
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暑さも和らいできた、初秋の頃。
いつも唐突に、この地を訪れる名取という男は、やはり今回も唐突にやって来た。
「いい加減、この呼び出し方はやめてくれませんか」
名取は、いつも自分の式でぐるぐる巻きにして夏目を呼び寄せるのだ。
今も、等身大の真っ白な人形(ヒトカタ)が体に巻き付いている。
元は半紙だろうに、何故こんなに大きくなるのか、夏目には解らない。
けれどそれは、どうでもいい事でもあり。…それよりは。
「名取さん」
咎めるように名を呼んだ夏目は、視線で批難する。
「おかしいな。…ワザとじゃないんだよ」
嘘くさい。――夏目は咄嗟に思う。
名取が浮かべている笑顔が、また更に嘘くさいからかもしれない。
そんな所も、嫌いでは無いけれど。
「早く、これ取って下さい」
「ん〜、どうしようかな」
「どうしようかな?」
名取は、夏目の頬を指先ですうっと撫でた。
「ひゃっ」
色気の無い声を発した夏目だ首を竦めると、名取はクスリと伊達眼鏡の奥で笑う。
「もう、悪戯は止めて下さい」