名夏、置き場
□『月に磨く』
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今夜は満月。妖怪の血が騒ぐのか、ニャンコ先生は酒瓶を抱えて(?)森へ夜遊びに出てしまった。
どうやら、親しくしている友人がいるらしい。
夏目はといえば、塔子さん手作りの団子を肴に、二階の自室で一人、お月見に興じていた。
「ちぇ、一緒に食べようと思ってたのに…。ニャンコ先生め」
『子供には、まだ早い。留守番しておれ』
とか、出掛けに残したのだ。
夏目は思い出して、腹立たしさのまま団子を一つ口に放りこんだ。
流石、料理上手の塔子さん作だ。口に入れた団子は程よく軟らかく弾力もあって、餡子の甘さも丁度いい。
一言で言うなら、絶品。
満足してふと上げた視界の先、窓の向こうの夜空には、丸い大きな黄金色の月がぽっかりと浮かんでいる。
「残しておいてなんかやるか」
全部一人で食べてしまおう。
そう思ったら、すっかり気分も晴れて、夏目は窓の桟に肘をつくと、綺麗な月を眺めながら食べ始めた。
そうしていると不意に、ヒラリと何かが飛んで来て、ぺタリと、夏目の額に貼り付いた。