創作小説・「苦労人」シリーズ
□忙しいね。
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「眠い…」
眠くて仕方ない。
デビューしてから毎日のように仕事している。
学校には何とか行っているが、授業についていけずヤバい。卒業出来るのか分からない。
何より睡眠不足で体がヤバい。
眼の下の隈は日に日に濃くなってきている。
それでも笑えと周りは言う。
「いっくん…怖いよ」
「眠いんだよ」
お前もだろーよ、と相葉くんを見れば…
少し窶れている。
「つーか…いっくんって…」
「壱くんって言いにくいから。だからいっくん」
「昭和のアイドルみたいだな」
相葉くんは、そうかなぁとニコニコしている。
「相葉くんさ、体平気?俺さ、正直しんどい…」
ポロッと弱音を吐く俺を意外そうに一瞥し、椅子に深く座り直した。
「俺も…。だけどさ、アイドルになったじゃん?ファンの子にがっかりされたくないし、頑張るしかねーよ。それに…」
「それに?」
「しんどい顔は見せたく無いんだ。アイドルって笑顔をみんなに届ける仕事だと思ってる」
大人だな…
「そっか…俺も(なるべく)頑張るな」
俺は相葉くんみたいな考えは出来ない。
俺は正直過ぎるから、顔にも態度にも出る。
「つーかさ〜…相葉くん、家帰れよ!」
大人発言で流されそうになったが、ここ一週間ぐらい家にいる。帰る様子が無い。
「いーじゃん!明日一緒な入りなんだし」
「その発言、昨日も聞いた」
帰りそうに無いな…
だって拗ねながら、炬燵に潜りやがったよ。
「母ちゃん心配すんぞ!」
「…」
無視か?無視か?!
ふうっとため息を吐きながら、TVを付ければ、俺達が写っている。
恥ずかしい!
チャンネルを変えようとリモコンを探すが無い。
あれ?さっきまで在ったよな?
「いっくん、バク転上手いよね〜」
何で持ってんのリモコン!
「んな事ねーよ。つーか、チャンネル変えて!」
「俺達が写ってんだよ?見ようよ!」
恥ずかしいわ!
「ダンスしてたの?」
話題戻しやがった。
「してない。バイトしてるし、部活もしてない。事務所入ってリーダーに教えてもらった」
「ふーん…」
何だよ。自分で聞いときながら、ふーんって!
「いっくんって翔ちゃんとペア多いね〜」
また話変わった。
「そう?」
天然の対処の仕方は、突っ込まないことだ。無駄に突っ込むと収集がつかなくなるし、話が進まない。そして疲れるだけだ。
水のように柔軟に流す。