SHORT
□ボンゴレ式修学旅行 Varia ver.1
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壱
深い森の更に奥深い位置にあるVaria城は、それでも朝は明るい日が差し込む。
色鮮やかな鳥達も、豊かな声で朗らかに囀る。
清々しくて、美しい朝だ。
しかし、そんな朝をぶち壊すようにドスドス歩く鮫が一匹。
「ゔお゙ぉおい!!
起きてるかぁ!?」
「るせぇ」
雄叫びを上げながら部屋に入って来たスクアーロは、XANXUSに辞書を投げつけられた。
「ゔべっ!!
なんでてめーは冒頭からそんなテンションなんだぁ!?
今後のストーリーが心配だぁ!!」
「るせぇ」
今度はブランデーの入ったボトルを投げられた。
「がっ!!」
ものの見事にボトルは割れて、スクアーロはつゆだく状態になった。
「てめぇは一々うるせぇんだよ」
「DVも大概にしろぉ!!
仕舞いに泣くぞ、ゔぉい!!」
「猿轡でも噛ませたら少しは静かになるか」
スクアーロは黙った。
「で、何の用だ」
「……………………………………………」
「ジェスチャーでわかるか」
「……明日辺りに慰安旅行でもしねぇか……?」
「何処で」
「九州」
「はぁ?」
XANXUSは壮絶な皺を眉間に作った。
噛み付くような声色に、スクアーロは予想はしていたが、たじろいだ。
「この国ですんのか。
しかもあえての九州だと」
「い……、イタリアに帰んのは面倒だろぉ……。
行く場所はダーツで決まったんだぁ……。
てめぇも行くか?」
「クソ忌ま忌ましいジャッポーネで旅行するわけねぇだろ、ドカスが!!」
XANXUSはグラスに残ったブランデーを煽った。
更にそのグラスも投げて、『帰れ』と命じる。
「ふげっ……てめぇがいねぇと、なんか慰安旅行する意味がなくなる気がすんだが……」
「知らん。
九州で何する気だ」
「温泉行ったり、酒とか肉とか美味いもん食」
「行くぞ」
XANXUSは衣類の入った鞄を持つと立ち上がった。
「……って、ゔお゙ぉおい!?
何、一瞬で旅行の用意してんだぁ!!
食べ物に釣られやがってぇ!!」
「はぁ?」
XANXUSは机を蹴飛ばし、今まで座っていた椅子でスクアーロを殴った。
、流石のスクアーロも、とうとう床に倒れ伏した。
「おげぶぅっ!!」
「勘違いするな。
オレは」
「オレは?」
「…………………、さっさと行くぞ。5分以内に用意しろ」
「言い訳ぐらい考えてから言えぇ!
そもそも旅行、明日だっつーの!!」
「…………」
XANXUSは、珍しく非常に残念そうな顔をした。
その顔のままスクアーロの髪を掴み、背をブーツで踏み、思い切り海老反りにした。
「〜゙〜゙〜〜〜゙〜〜!?」
「ぶはっ。良い眺めだな。カス鮫。
てめぇ…………オレを誰だと思ってる?」
「〜゙〜〜〜〜っ゙〜〜〜〜〜!!」
「そうだ。
オレはVariaのボス、XANXUSだ。
オレが行く、と言えばVariaは従う。
そうだろ?」
片方の眉を上げて笑うXANXUSにスクアーロは屈するしかなかった。
――――――――――――――
「で、移動手段は何だ」
XANXUSは荷物をレヴィに持たせた状態で尋ねた。
アジトの門前に集まった幹部達は一斉に首を捻った。
「決めてないわねー。
まだ予定組んでないもの。
ボスがせかすから」
「ししっ」
「自家用ジェットか?」
全員が想像した後、全力で首を振った。
「目立ち過ぎだろぉ!!」
「じゃ、リムジン?」
ベルの意見に皆が賛成した。
「XANXUS様!!
リムジンならもう用意は出来てます!!」
「先に言え、馬鹿が」
早速リムジンにXANXUSが乗り込んだので、幹部達もそれに倣った。
「……待て。
なんでてめぇらまで後ろに乗り込む」
「なんで、ってレヴィとスクアーロが前に乗るから、オレとルッスーリアは後ろになるんじゃねー……」
「その分ここが狭くなる。てめぇらも前に乗れ」
「え……」
無茶苦茶な発言を事もなげに、XANXUSは言い放った。
「…………」
「乗るしかないみたいね」
ベルとルッスーリアは前の座席に乗り込んだ。
「ぐえ゙ぇえ!! 狭ぇぞぉ!!」
「ルッスーリア…………もう……少し、スクアーロの方に……ずれろ……」
「身動きがとれないわ〜〜」
こうして、リムジンは発進した。
九州にて。
道行く人々はリムジンに驚くよりも、運転座席の密集具合に驚くのだった。
つづく
「ゔお゙ぉ゙ぉおおい!!
これ以上続いたらオレの身体がもたね……」
「るせぇっ」
バキッ