SHORT
□ボンゴレ式修学旅行 Varia ver.5
1ページ/1ページ
伍
脱衣所に入り、Varia幹部は隊服を脱ぎ始めた。
「あ゙ー……
久々の温泉だぜぇ」
うっとりと視線を宙に泳がせたのは、先程落ちたのが嘘のようにピンピンしているスクアーロ。
伊達に毎日XANXUSに殴られていないわけだ。
下に落とされても、直ぐさま戻ってきた。
「……ししっ、スクアーロってホントに温泉好きだな」
「たりめーだぁ。
温泉は最高だろ?」
鼻息の荒いスクアーロに呆れて、ベルは嘲笑した。
「オレ入った事ねーよ。
でも城の方がいいに決まってんじゃん。
ジャッポーネの風呂なんかたかが知れてるし。
スクアーロの美意識の無さに、オレおったまげー」
「てっめぇ!」
「何、やんの?」
スクアーロが怒りに燃えながら剣を構えると、ベルも一気に服を脱いでナイフを取り出した。
「素っ裸で闘わないの!!
もう…………
敵と闘うならまだしも、
仲間同士その格好で闘うなんて格好悪いわよ〜〜」
ルッスーリアの言葉を聞いて、スクアーロとベルは自分の身体を見下ろした。
そして相手を互いに見る。
確かに間抜けだ。
「チッ…………」
「ちぇっ。つまんねーの」
「そもそも温泉に入りたくねぇなら入んな!!
お゙い゙、クソボス!!
てめぇも何か言ってや………………ゔお゙ぉいい゙ぃ゙っ!?」
「あ?」
今まさに温泉へ向かおうとしていたXANXUSは、口をぽかんと開けたスクアーロに一瞥をくれた。
浴衣姿で。
「あんたは温泉……っつーか、むしろ風呂入んの初めてかぁ?」
「なわきゃねぇだろ」
「服着て温泉入っちゃいけねぇ事、知らねぇのかぁ?」
「……オレを馬鹿呼ばわりしてんのか」
「い゙っ、いや!!
してねぇ……けど……よぉ…………」
「…………浴衣の事か?
相変わらず馬鹿なカスだな。
てめぇは」
スクアーロは、酷く鼻で笑われた。
「オレはまず、温泉の周り景色を楽しむんだ。
分かったかドカスが」
「…………どう反応したらいいんだぁ?
そこまでしてオレ達と風呂に入りたくねぇのかよ」
「あたりめぇだろ。
理由は、てめぇらと入れば狭くなる」
「またか…………」
スクアーロが呆れて額に手をやると、XANXUSは指を二本あげて突き出した。
「で、理由その二」
「なんだぁ……」
「何が悲しくて野郎と風呂に入らなきゃなんねぇんだ」
「お前もう温泉入んな!!」
XANXUSはスクアーロを無視すると、さっさと脱衣所を出た。
「ししっ、オレも入ろ♪」
「置いて行かないでよ〜〜ぅ」
「ボス!!
椅子はどちらに?」
「そこ」
スクアーロも後に続いた。
目の前の温泉は中々見事だったが、それに入っている人間のせいで色々と残念なことになっている。
「うししっ、まあけっこーいい風呂じゃん?」
「いいお湯ね〜〜」
「寒いぞ。扇ぎすぎだ、カス」
「申し訳ございません!!」
目を隠し、ティアラを被ったままだったり、サングラスしたオカマだったり、椅子に座っていたり、その横で団扇を使って座っている男を扇いでいたりなど。
いかにこの集団が混沌たるものか、スクアーロは思い知ったのだった。
といっても白銀のロン毛をたなびかせているスクアーロも相当変なわけだが。
それと、スクアーロ。
湯舟につかるときは、髪の毛をきちんと縛りましょう。
そして5分後、Varia御一行は
「ゔお゙ぉぉいっ!!
いい湯だぞぉっ!!」
「っ!?
ス、スクアーロ!!」
「あ゙ぁん?」
後から来たボンゴレ10代目と、その愉快な守護者達との壮絶なお湯かけ合戦を繰り広げ、
「篠突く熱湯!!」
「極限イングラム、博多バージョン!!」
と、ボコボコにされ、
「ゔお゙ぉい!!
なんかよく分からねぇが……、覚悟しろカス共ぉ!!」
と、10年バズーカによって10年後と入れ替わり、
「こうなったら…………
死ぬ気の零地点突破、一世エディション……」
と、凍らされたのだった。
ただ、例外が一名。
「…………………」
トラウマまみれの零地点突破にびびっ、いや、素晴らしい速度で反応し、椅子ごと一瞬で逃げた人間がいた。
XANXUSだ。
難を逃れた10年後XANXUSは、椅子をもとの位置に戻しつつ、即座に状況を理解し、一度脱衣所で服を脱いでから、一人でゆっくりと温泉を楽しんだ。
「……悪くねぇ……湯だ…………フッ……」
珍しく寛いだ様子を見せるXANXUSには勿論、零地点突破で凍ったスクアーロ達を助けるという考えはなかった。
温泉は先程の喧騒が嘘のように静かだった。