長編

□NO.2
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2.



少女に投下された麻酔効果は、驚異的に少女の体内で消化され、今に至る。

「離せ・・・離せッ!!」

「痛て、痛って!」

麻酔弾の付属効果――麻痺が役に立ち、俵担ぎにされた少女の攻撃に重みはあまりない。

しかし連打となると、結構『痛い』と感じる。

「ミストレ・・・手伝ってくれ。お前女子の扱い得意だろ?」

「そんな野蛮な女の子専門外さ。しかも防衛本能働いてそうだし、俺じゃ無理」

少女を担いでいるエスカバが、不満げな顔で歩を進める。



「離せ、離せ・・・!」

「・・・バダップ、こいつ本当に突き出すのか?ちょっと可哀想になってきたぜ」

バダップもやられた『情緒の引き出し』。

エスカバも少しあてられた。

「ミッション遂行の為だ。解放するわけにはいかない」

「でもよぉ・・・」




エスカバは何か言い出そうとしたが、バダップの睨みにより、押し黙る。

そんなやり取りを見て、ミストレは肩をすくめた。

「そうそう、標的を見逃すなんて以ての外だよエスカバ」

他二人にめった打ちで否定され、ふて腐れたようになるエスカバ。




そんな会話を聞きながら、少女は策を巡らせていた。




きっと『研究所』に着くまでに、麻痺効果は回復しないだろう。

なら、この不調のコンディションでオーガ最高峰を3人――?

いや、無理だ。

いくら何でもそんなハイレベルな戦闘、今の私には出来ない。

ならば、どうすれば。





体技しか能がないなど、偏見だ。

『戦闘』というのは戦略、腕力、素早さ等も揃えたスキルのことである。

つまり、少女は研究所で『知能』のテストを受けなかっただけで――。

『戦略』を立てることは造作もないのだ。




「おい、こいつ急に静かになったぜ」

「大方暴れて疲れたんじゃない?本来、腕を動かすことすら出来ないはずなんだから」

そんな風に解釈するミストレ。

「・・・だと、いいがな」

「え?」

バダップの呟きに、ミストレは反応する。

が、追求はしなかった。

する道理もなかった。




バダップは分かっていた。

かなり一方的だったが一戦交えて、少女が腕ずくで逃げ出したわけでないことを悟ったのだ。

この少女は賢者だ、と――。
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