短編

□極月。
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「おい恋歌!」

「ひぎゃあああななな何ですか佐久間君!!」




いつも、このような問答から始まる佐久間と恋歌の会話。

恋歌が極度のビビリなので、彼女の奇声はもう茶飯事だ。




そして佐久間は、そんな恋歌が大好きで、それと同じくらい恋歌を苛めるのも大好きだった。

「おまえ数学居眠りしてただろ?」

「ひゅわ!?何故ご存じで!?」

「ばーか、俺の前の席、お前だろ?」

そう言われて、はっとなる恋歌。




そ、そういえばそうだったぁ・・・((涙




「間抜け、ド阿呆」

「うわあああん」

けなすの大好き、泣き顔大好き佐久間は、ぴーぴー泣く恋歌の頬をつねる。

「(あー可愛い)」

「うわあああん」

何度もつついてみれば、その白い頬は柔こい。




「いい肌してんな」

「ふっひゃあああ!?すすすすみませんお許しを―――!!」

いきなり褒められ、逆にびびる恋歌。

その反応は、佐久間にとって面白くない。

「折角褒めてやったのに」

「さ、佐久間君が私を褒める時って何かの前兆だから・・・痛、痛たたたッ!!!」

そんなろくでもないように言われ、不機嫌そうに恋歌の頬をいっそうつねってやった。

「うっせえんだよ、びびりの癖に」

「ひいぃぃ仰る通りです私はびびりです刃向かってすみませんでしたああああ」

素晴らしい肺活量だ。

一括りに泣きながら、恋歌は佐久間に謝る。




佐久間は「よろしい」と恋歌の頬から手を離す。

恋歌は頬をさすりながら、しょぼんとなってしまった。




うう・・・やっぱり佐久間君怖い・・・。

で、でも、今日の私は一回り違うもん!

きょ、今日こそ、苛めるのやめてって言うんだもん!




「あああ、あのっ、佐久間くゆっ」




・・・早速舌を噛みました((涙




「何だよそれ、可愛いなおい」

「えええええ!?」

褒めるポイントに嫌味を感じてしまう恋歌。

舌を噛んだ瞬間『可愛い』なんて、どういう神経だ。




「あ、あ、あのねっ・・・!」

失敗した恥ずかしさと、もう失敗したくないとの思いで、恋歌は身を乗り出してしまう。

「何だよ?」

「・・・!」

その勢いでか、佐久間の端整な顔が目の前に来る。

「へ、あ、えと」

勿論男子に免疫などない恋歌。

顔を真っ赤にして、素早く飛び退いた。

「ななな、何でも、ないですッ!!」

「気になるな」

「ほんとに何でもない、です!!」




顔を隠して焦る恋歌が可愛く思え、佐久間は飛び退いた恋歌の元へ行く。

「おい、びびり」

「ひゃわ!?ははははいッ!!」

びく、と肩を震わせて驚く恋歌。

というか、自分を『びびり』と認めている。




「・・・」

「・・・?」

じぃ、と恋歌の顔を覗き込む佐久間。

どこか吃驚したような表情だ。

「ふぇ・・・佐久間、君・・・?」

おろおろ、と恋歌は焦る。

自分がまた粗相をしたのだろうかと、不安になる。




「・・・いや、何でも、ない」

「え」

「『え』じゃない、『はい』だろうが」

「は、い?」

「疑問系か」




新手のイジメだろうか。

そう思ってしまう恋歌。

流暢に喋らない佐久間は珍しい。

自分を困らせるための策略だろうか。

多分そうだろう。




「・・・やっぱ言おうか」

「?」

そう言って、へたりこんだ恋歌の耳元を指さす佐久間。




――そこには。




俗に、「G」と呼ばれる――

まあ、「あれ」がいたわけで。




「ひ・・・ひんぎゃああああああ!!!」

「五月蠅ぇなぁ」






「ななな何で言ってくれなかった、の!?」

「いやー焦らした方がリアクション大きいかと思って」

「Σリアクションを求めないで!!」
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