じゃあ、また。
道路の反対側に立つ土方さんに
手を振ろうと上げた手が、
中途半端なところで止まり、
躊躇した結果、
振らずに下ろした。
さっき、別れの挨拶をしたはずなのに、
2人とも、固まったみたいに、立ち尽くす。
言ってもいいかな?
わがままじゃ、ないかな?
吸っていた煙草をおもむろに消して、
携帯灰皿に捨てると、
土方さんは、道路を渡ってこっちやってきた。
目の前まで来るなり、私を見下ろすように言う。
「言いたいことがあるんなら言え」
『…怖いです』
頬を引き攣らせた土方さんが、
「この野郎…」と吐き捨てるように言うと、
私に背を向けた。
『あの…!』
「なんだよ?!」
『…怖いです』
「わかったよ!何度もうるせぇな!!」
『でも…』
「あ?」
『まだ、一緒にいたいです』
私が言った途端、
土方さんは真っ赤な顔して後ろにひっくり返った。