「……」
『すぴー…すぴー…』
こいつは馬鹿なのだろうか。それとも学習能力がないのか。
ベッドで気持ちよさそうに眠るなまえをみてそんなことを思った。つい数日前に僕に押し倒されたにもかかわらず全く警戒心のない顔で眠りこけている。
警戒されて逃げられるのも嫌だが、こうも無防備だと男として見られていないのかと癪に障る。
「なまえ、起きろ」
『ん〜』
揺すってみるも、全く起きる気配がない。それどころか「あー、その雪見だいふくはわたしのなのー」と季節外れな寝言まで言う始末だ。
なんだかムカついたので鼻をつまんでやった。
『…むぐ』
色気の欠片もない声?を出してころりと反対側を向いた。こうなったら起きるまで色々してみようかと悪戯心がむくむくと湧き上がる。
手始めに顔中にキスをしてみることにした。
*******
『う…ん?』
なんだか顔中がくすぐったい。瞼、鼻、頬と至るところにちゅっちゅっと音を立てながら何かが落ちてくる。
何だか、温かくて…柔らかいもの。
…ん?この感触覚えがあるぞ。
たしか赤司くんの…赤司くんの?
それが唇に触れた時、記憶が呼びさまされた。
『赤司くんの…唇?』
「やあ、起きたかい?」
ぱちり
目を開けるとまず飛び込んできたのは赤色の髪、そして赤と黄色の瞳。最後に目に入ったのは三日月型の唇だった。
『って赤司くん!?』
「キスで目を覚ますなんて、どこかのお姫様だね」
『ち、近い近い!!』
ぐぐぐ…と馬乗りになっている彼をどけようとふんばっていると、もう一つキスが落ちた。
『何でここにっ!』
「なまえが僕の部屋で寝たんだろ」
『だ、だからってこんな…』
「…ねえなまえ」
男は皆狼だって、知ってる?
「この間といい、今日といい…、油断しすぎじゃない?」
『…え』
「教えてあげるよ。…その身体にね」
『や、ぁ!』
するり、と彼の手が服の中に侵入した。
.