短編

□微睡み
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「いい加減にしろ…!なまえ」

『いやーっ!絶対に嫌!』


ぐぐぐぐぐ…


毎度おなじみ、彼の部屋で二人きり。

普通の恋人ならここでうふふあははするものだろう。しかし、わたし達がしているものはそんな甘いものではない。


「散々煽っておいて、いざとなったらこれか」

『誰がいつ煽りましたか!?』


そう、貞操をかけた攻防戦だ。

赤司くんの何とも横暴な告白からわたし達の関係は始まり、何だかんだいって3ヶ月が過ぎた。
彼も男の子だし、そろそろ先に進みたい気持ちも分かるのだが、怖いものは怖い。


「何故そんなに嫌がるんだ」

『だ、だって、わたし初めてだし…絶対痛いもん』


クラスメイトの中には一足先に大人の階段を上った子もいる。その子によると初めてというものはすごく痛いのだそうだ。


『だ、だからもう離し「なまえは僕としたくないのか?」…え』


しゅんと落ち込む姿は、まるで捨てられそうな子犬みたいで。
普段の傍若無人な彼からは想像できないくらいの哀しそうな顔に、なんだかとてつもなく罪悪感を感じる。


『え、えと…』

「……」

『べ、別にしたくないって訳じゃ』

「なら話は早い」

『ぎゃっ!』



ああ馬鹿、わたしの馬鹿。

ベッドへと押し倒されながら思った。

この男に一瞬でも気を許したら喰われる、と。


「痛くしなきゃいいだけのことだろ」

『そ、そんなの無理に決まって』

「僕を誰だと思ってるの?」

『赤司様…です』



うん。だったら大人しく感じててよ。


そんな言葉と共に、ゆっくりと唇が重なった。


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