「いい加減にしろ…!なまえ」
『いやーっ!絶対に嫌!』
ぐぐぐぐぐ…
毎度おなじみ、彼の部屋で二人きり。
普通の恋人ならここでうふふあははするものだろう。しかし、わたし達がしているものはそんな甘いものではない。
「散々煽っておいて、いざとなったらこれか」
『誰がいつ煽りましたか!?』
そう、貞操をかけた攻防戦だ。
赤司くんの何とも横暴な告白からわたし達の関係は始まり、何だかんだいって3ヶ月が過ぎた。
彼も男の子だし、そろそろ先に進みたい気持ちも分かるのだが、怖いものは怖い。
「何故そんなに嫌がるんだ」
『だ、だって、わたし初めてだし…絶対痛いもん』
クラスメイトの中には一足先に大人の階段を上った子もいる。その子によると初めてというものはすごく痛いのだそうだ。
『だ、だからもう離し「なまえは僕としたくないのか?」…え』
しゅんと落ち込む姿は、まるで捨てられそうな子犬みたいで。
普段の傍若無人な彼からは想像できないくらいの哀しそうな顔に、なんだかとてつもなく罪悪感を感じる。
『え、えと…』
「……」
『べ、別にしたくないって訳じゃ』
「なら話は早い」
『ぎゃっ!』
ああ馬鹿、わたしの馬鹿。
ベッドへと押し倒されながら思った。
この男に一瞬でも気を許したら喰われる、と。
「痛くしなきゃいいだけのことだろ」
『そ、そんなの無理に決まって』
「僕を誰だと思ってるの?」
『赤司様…です』
うん。だったら大人しく感じててよ。
そんな言葉と共に、ゆっくりと唇が重なった。
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