短編

□頑張り屋
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「なまえーっ、ポカリ!」

『はーいっ!』

「あっ、こっちにも欲しいっス!」

『はいどうぞ!』

「うわあああ!黒子ー!」

『ん…?ってきゃー!黒子くんしっかり!』

「あ、ありがとう…ございます…」


この帝光中学校では毎日がこんな様子。

総部員数200を超える強豪校では、練習もハードなわけで。

特に一軍レギュラーともなれば練習量は半端なかったりする。

そして、あたしはそこのマネージャー。


「なまえちゃん、こっちも手伝って!」

『分かった、ちょっと待ってて!』


同じくマネージャーであるさつきちゃんとてんやわんや。

こんなに人がいるのだからもっとマネージャー増やせばいいのにと思うけど、マネージャーになった人は一週間も立たないうちに辞めてしまう。

理由は簡単、体力が持たないからだ。



『はふー』


何とか一段落ついた所で、ずるずると壁に持たれる。

ふ、と気配がしたと思えば、横に赤司くんが座っていた。



「なまえ、お疲れ」

『赤司くんもお疲れ様!何か飲む?』


そういって立ち上がろうとすると、疲れが出たのかバランスを崩し尻餅をついてしまった。


『あ、あれ…?』

「疲れているんだろう、座っていたほうがいい」

『で、でも、これくらい大丈夫』

「いいから」


ひょいと身体を持ち上げられ、赤司くんの足の間に座らされた。

汗のにおいや、背中に伝わる心拍数に何だか恥ずかしくなる。


『ちょ、赤司くん!?』

「暴れるな」

『にょっ!』


離れようと暴れるあたしを捕まえるように、赤司くんの手がお腹に回された。

さらに距離が近くなり、慌ててその腕をべしべしと叩く。


『は、離してっ』

「…なまえは頑張り屋さんだからね」

『…へ?』

「無理してないかといつも心配だよ」

『…』


耳元で聞こえる、優しい声色の言葉。

あたしのことも見てくれているんだなぁって、自然に頬が緩んだ。


『ふふ…』

「何笑ってるの」

『いや、何か嬉しくて』



確かに色々やることはあるけれど、大変じゃないんだよ?



『今度の試合、頑張ってね』

「勿論、絶対に勝つさ」



コートの上で輝くあなたを、見られるんだもんね。



頑張り屋さんでいられる理由



 

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