「なまえーっ、ポカリ!」
『はーいっ!』
「あっ、こっちにも欲しいっス!」
『はいどうぞ!』
「うわあああ!黒子ー!」
『ん…?ってきゃー!黒子くんしっかり!』
「あ、ありがとう…ございます…」
この帝光中学校では毎日がこんな様子。
総部員数200を超える強豪校では、練習もハードなわけで。
特に一軍レギュラーともなれば練習量は半端なかったりする。
そして、あたしはそこのマネージャー。
「なまえちゃん、こっちも手伝って!」
『分かった、ちょっと待ってて!』
同じくマネージャーであるさつきちゃんとてんやわんや。
こんなに人がいるのだからもっとマネージャー増やせばいいのにと思うけど、マネージャーになった人は一週間も立たないうちに辞めてしまう。
理由は簡単、体力が持たないからだ。
『はふー』
何とか一段落ついた所で、ずるずると壁に持たれる。
ふ、と気配がしたと思えば、横に赤司くんが座っていた。
「なまえ、お疲れ」
『赤司くんもお疲れ様!何か飲む?』
そういって立ち上がろうとすると、疲れが出たのかバランスを崩し尻餅をついてしまった。
『あ、あれ…?』
「疲れているんだろう、座っていたほうがいい」
『で、でも、これくらい大丈夫』
「いいから」
ひょいと身体を持ち上げられ、赤司くんの足の間に座らされた。
汗のにおいや、背中に伝わる心拍数に何だか恥ずかしくなる。
『ちょ、赤司くん!?』
「暴れるな」
『にょっ!』
離れようと暴れるあたしを捕まえるように、赤司くんの手がお腹に回された。
さらに距離が近くなり、慌ててその腕をべしべしと叩く。
『は、離してっ』
「…なまえは頑張り屋さんだからね」
『…へ?』
「無理してないかといつも心配だよ」
『…』
耳元で聞こえる、優しい声色の言葉。
あたしのことも見てくれているんだなぁって、自然に頬が緩んだ。
『ふふ…』
「何笑ってるの」
『いや、何か嬉しくて』
確かに色々やることはあるけれど、大変じゃないんだよ?
『今度の試合、頑張ってね』
「勿論、絶対に勝つさ」
コートの上で輝くあなたを、見られるんだもんね。
頑張り屋さんでいられる理由
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