バンッ!!
『!赤司…くん』
「探したよ、なまえ」
大好きな、人だった。
冷たい人に思われがちな彼は、本当は皆のことをちゃんと見てるし、厳しい言葉の中にも優しさが混じっていた。
この人と一緒に歩いていこうと誓ったあの日は随分前のこと。
「あなた、赤司くんの何なの?」
「全然つり合ってないしー」
「あーあ。こんなんじゃ赤司くんの評判も下がるよねー」
ある程度は、覚悟していたこと。
けれどあたしはそれを受け流せる程大人ではなかったし、彼に泣きつく程子供でもなかった。
何もかも中途半端だったあたしは、そっと彼から離れた。
『どうしたの、こんな時間に』
部活の真っ最中であろう、この時刻。
帰宅部だったあたしは昇降口で帰る準備をしている所で。
誰よりも勝利に執着している彼が、何故練習をほったらかしてここにいるのか。
「それよりも、何か僕に言うことがあるだろう?」
『え?言うことって…痛っ』
「ここにきてとぼける気か?なまえ」
ギリッと、掴まれた手首。
それに痛みを感じる暇もなく、彼に引っ張られるままどこかへ向かいだす。
それは、前にも訪れた場所。
赤司くんらしい、綺麗に整頓された部屋だった。
『きゃっ!』
どさりと放り投げられた身体はベッドの上。
体勢を立て直す暇もなく彼があたしに覆いかぶさった。
あたしを見下ろす瞳は静かだけど確かに怒りを孕んでいた。
『な、に、怒ってるの…』
「何故、僕を避ける」
『それは…』
「…もういい」
ビリッ
『っ、いやぁっ!』
嫌な音と共に飛んだボタンが視界の隅に映った。
.