短編

□メランコリー
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バンッ!!


『!赤司…くん』

「探したよ、なまえ」

大好きな、人だった。

冷たい人に思われがちな彼は、本当は皆のことをちゃんと見てるし、厳しい言葉の中にも優しさが混じっていた。

この人と一緒に歩いていこうと誓ったあの日は随分前のこと。


「あなた、赤司くんの何なの?」

「全然つり合ってないしー」

「あーあ。こんなんじゃ赤司くんの評判も下がるよねー」


ある程度は、覚悟していたこと。

けれどあたしはそれを受け流せる程大人ではなかったし、彼に泣きつく程子供でもなかった。

何もかも中途半端だったあたしは、そっと彼から離れた。




『どうしたの、こんな時間に』


部活の真っ最中であろう、この時刻。

帰宅部だったあたしは昇降口で帰る準備をしている所で。

誰よりも勝利に執着している彼が、何故練習をほったらかしてここにいるのか。


「それよりも、何か僕に言うことがあるだろう?」

『え?言うことって…痛っ』

「ここにきてとぼける気か?なまえ」


ギリッと、掴まれた手首。

それに痛みを感じる暇もなく、彼に引っ張られるままどこかへ向かいだす。

それは、前にも訪れた場所。

赤司くんらしい、綺麗に整頓された部屋だった。


『きゃっ!』


どさりと放り投げられた身体はベッドの上。

体勢を立て直す暇もなく彼があたしに覆いかぶさった。

あたしを見下ろす瞳は静かだけど確かに怒りを孕んでいた。


『な、に、怒ってるの…』

「何故、僕を避ける」

『それは…』

「…もういい」


ビリッ


『っ、いやぁっ!』



嫌な音と共に飛んだボタンが視界の隅に映った。


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