「見つけた」
『ぎゃっ!!』
校舎の裏の、すみっこで。
身体を丸めて物陰に隠れているなまえに声をかければ、びくっと肩を揺らした。
「僕から逃げられると思ってるの?」
『ひぃ!色々怖い!』
入学式で、偶然隣り合ったなまえ。
黒い髪に、くりっとした大きな瞳。子猫を連想させるその子はいつも僕から逃げ回っていた。
『な、何で追いかけてくるんですか!』
「お前が逃げるからだろ」
『赤司君が追いかけてこなければ逃げません!』
そういいながらもそろそろと僕と距離をとろうとする。
もちろんそんなことを見逃すはずもなく、小さな身体を抱きしめた。
『ぎぃやあぁ!』
「煩い」
色気もへったくれもない悲鳴を上げ、腕のなかでじたばたと暴れる。
しばらく押さえつけていると、だんだん抵抗が弱まってきた。
『はぁっ…は…』
「ちょっとは大人しくする気になった?」
あまり締め付けても可愛そうだと力を抜いた、その瞬間。
恐るべき速さで腕の中から抜け出した彼女は、一目散に逃げ出していった。
「…いい度胸だ」
知らず知らずのうちに、ゆるりと口角が上がる。
逃げられると追いかけたくなるのが動物の本能だろう?
「絶対に、捕まえてやる」
覚悟しときなよ、なまえ。
狩猟心に火をつけて
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