短編

□黒い子猫
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「見つけた」

『ぎゃっ!!』


校舎の裏の、すみっこで。

身体を丸めて物陰に隠れているなまえに声をかければ、びくっと肩を揺らした。


「僕から逃げられると思ってるの?」

『ひぃ!色々怖い!』


入学式で、偶然隣り合ったなまえ。

黒い髪に、くりっとした大きな瞳。子猫を連想させるその子はいつも僕から逃げ回っていた。


『な、何で追いかけてくるんですか!』

「お前が逃げるからだろ」

『赤司君が追いかけてこなければ逃げません!』


そういいながらもそろそろと僕と距離をとろうとする。

もちろんそんなことを見逃すはずもなく、小さな身体を抱きしめた。


『ぎぃやあぁ!』

「煩い」


色気もへったくれもない悲鳴を上げ、腕のなかでじたばたと暴れる。

しばらく押さえつけていると、だんだん抵抗が弱まってきた。


『はぁっ…は…』

「ちょっとは大人しくする気になった?」


あまり締め付けても可愛そうだと力を抜いた、その瞬間。

恐るべき速さで腕の中から抜け出した彼女は、一目散に逃げ出していった。



「…いい度胸だ」



知らず知らずのうちに、ゆるりと口角が上がる。


逃げられると追いかけたくなるのが動物の本能だろう?



「絶対に、捕まえてやる」




覚悟しときなよ、なまえ。




狩猟心に火をつけて



 

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