短編

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キーンコーンカーンコーン


チャイムの音が、昼休みを告げる。


『ん、お昼だ!』

「なまえちゃん、一緒に食べよう」

『うん!すぐ行…うゆっ!!』


早起きして作ったお弁当を持って。さつきちゃんの所へ行こうと席を立てば、


「桃井、こいつ借りるよ」


あたしの身体は俺様赤司様の腕の中に。


『ひっ!あ、あたし今日は』

「今日は屋上で食べようか」

『人の話を』

「天気も良いしね」


あたしの言うことなんかお構いなしに。

勝手に話を進める彼の手はあたしの腕をがっちりと掴んでいる。このまま連れていかれてたまるかと、ずるずると引きずられながらも、助けを求めた。


『さ、さつきちゃん…!』

「いってらっしゃ〜い」


ニコニコと手を振るさつきちゃんは悪気はないんだけども。


「ほら、ちゃんと歩いて」

『うううううう』


唸らずにはいられなかった。




*******




「ここがいいかな」

『…』


引きずられるまま、やってきた屋上。

最近は危険だとかで本来ここは立入禁止になっており、一般生徒は入れないというのに。どんな手を使ったんだろうか。
…ふるふるふる。考えるの止めよ。絶対ろくでもないことに決まっている。


「なまえ?」

『ん…わっ!』


何気なく振り返ったら、思っていたより近くに彼の顔。

とっさに視線を逸らそうとすれば、逃がさないとばかりに頬に両手が添えられた。
色の違う眼に見つめられ、嫌でも心臓がドクドクと音を立てる。


『ななな、何でしょうか』

「心臓の音、凄いね」

『っ、』

「フフ、真っ赤」



気が付けば、彼の腕の中に。

いきなりのことに驚いて彼の身体を押そうとしたけれど、所詮男と女。力で敵うはずもなかった。


「まだ逃げる気か」

『だ、だって』

「僕が怖い?」

『う…ちょっと』



そりゃ、あんだけ追っかけられたら怖いに決まっている。そうでなくても、曲者共を従える彼はどこか近寄りがたい雰囲気を持っているというのに。

というか、だんだん腕の力が強まっているのは何故だろう。


『ちょ、苦し…』

「僕はなまえが好きだよ」

『え、あ、その』


抱きしめられているこの状況で、そんな急に告白なんて。

何かもう色々処理能力を越えまくったあたしの頭はぐるぐる回るばかり。
何か返事をしなきゃとか、人が来たらどうしようとか考えてたら、腕の力が抜けた。


「さて、お昼にしようか」

『…』

「そんなアホ面してると卵焼き突っ込むよ?」

『…』



その後、お昼休みをどう過ごしたかは覚えていなかった。




とりあえず捕獲




「おーい、どうした。早く教科書読めー」

「なまえちゃん!呼ばれてるよ!」

『はいっ!?、え、と…何の教科書ですか…?』

「…疲れてるんだな。保健室行って来い」

「(ククク…)」


.


 

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