「きゃー!!」
『…?』
お昼休みの出来事。
大好きなクリームパンを頬張っていたら、校庭のあたりから黄色い声が聞こえた。たくさんの女の子に混じりわたしも窓から外を見てみたら、見覚えのある車が校門のあたりに止まっていた。
「見た見た!?なまえ!すっごいカッコいい人がいるの!」
『…あっ』
見覚えのある車だと思ったら、これまた見覚えのある人物がいた。
片目の瞳を覆い隠す長い髪に、目元の泣きぼくろ。見間違えるはずもないその人は、あちこちから黄色い声を浴びせられ爽やかな笑顔を振りまいている。
と、ふいにこちらへと向けられた視線。なんだか恥ずかしくなって目をそらしてしまった。失礼なことをしたかなと思い、もう一度向こうとすると、ちょうど横にいた男子に声をかけられる。
「なー…なまえもああいう男が好きなわけ?」
『えっ…、べ、別にわたしは』
「…まあいいや。そのパンうまそーじゃん、もーらい!」
『ちょ…勝手に』
「へへっ、ごちそーさん!次教室移動だぞ!」
『もー…』
かじられたパンに文句を言いながらも、次の授業の準備をして教室を後にした。
「……」
その後ろで辰也兄様が鋭い視線をこちらへ向けていることなど知らずに。
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「じゃーねなまえ、ばいばい!」
『うん、またね』
今日は部活だという友達と別れ、もうすぐテストだから勉強しなくちゃと思いながら歩いていると、目の前に影が出来た。
「…待ってたよ」
『!、兄様』
「行こうか」
『っ、痛っ…』
乱暴につかまれた手首。そのまま引っ張られ足をもつれさせながらも兄様の後を追う。
いつもだったらこんなことはしないのに。今の兄様は少し怖くて。
『に、兄様…』
「…」
『わたし何か…きゃっ!』
半ば押し込められるように乗せられた兄様の車。
後を追うように運転席に座った兄様は車を走らせた。もちろん行く先なんか知るわけもなく、道を進んでいく。
『どこ、行くの』
「…随分と仲良さそうだったじゃないか」
『え?』
「あの男は、彼氏?」
『…?』
兄様にしては要領を得ない言葉。
しばらく沈黙していると、「昼休み、話してたろ」と言葉が飛んできた。
『ち、ちがうの、兄様』
「…着いたよ」
いつの間にか目的地に着いたらしい車。
高いマンションに、セキュリティーが厳しそうな入口は見覚えがあった。
『ま、待って、んんうっ!』
兄様が住んでいるマンションに連れ込まれ、玄関のドアが閉まったと同時に唇を塞がれた。
乱暴なキスに脚に力が入らなくなって、崩れ落ちる身体は、大きな手に持ち上げられた。
『あっ…』
そのままベッドへと降ろされ、上から覆いかぶさってくる兄様。顔の横に手をつかれ、逃げることは不可能だろう。
「なまえ…」
『や、話、聞いて…』
「他の男にフラフラするような悪いコは躾直さないとな」
『ひ、うっ…』
鎖骨、首、胸元とわざと見える所に所有印をつけられる。明日体育があるの、と訴えても止めてくれる気配はない。
「ここも、つけとこうかな」
『やっ!そんな所っ…ぁっ』
太股を持ち上げられ、脚の付け根ギリギリに唇を落とされる。
ちくりと痛みを残し、唇が離れた後には真っ赤な痕がついていた。
「白いからよく映えるね」
『兄、様ぁ…』
「…そんな甘えた声出しても許さないよ」
『んっ…』
そう言った兄様は嗜虐的な笑みを浮かべていた。
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