短編

□泣き虫
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『ふぇーん…うっ、う』

「なまえ?」


お昼の時間も終わり、日陰で本でも読もうかと訪れた場所には先客がいた。

小さな身体を更に小さく丸めて泣きじゃくっている姿は、小動物を連想させる。


『…あかし、くん』


思わず名前を呼べば、ぱっと顔を上げた彼女の濡れた瞳と視線が合う。

泣きすぎて真っ赤になった瞳。うさぎみたいだ、と思いながら隣に腰を下ろした。


「どうしたの?」

『…おとこのこたちがいじめるの。おまえはぶすだって』


…ああ。そういうことか。

なまえは誰にでも優しい。それに加え、いつも可愛らしい笑顔でいるため皆から好かれている。

大方、なまえをブスと言った男子達は構って欲しいが故のことだろう。

いわゆる好きな子いじめだ。


…けれど。


「ゆるせない、な」

『あかしくん?…わふっ』


抱きしめてみたら思ってたよりもちっちゃくて。


「これからはぼくがまもってあげる」

『え…』

「だから、もうなくな」

『…うん!』



この小さな女の子の笑顔を守りたいと思ったのは、何故だったんだろう。




泣き虫えんじぇる


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