短編

□生まれたものの運命
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『…征十郎』

「ん…なまえ?」


太陽と入れ替わりに満月が頂点に立つ午前零時。突然の訪問者は、かちゃりとドアを開けて部屋へと入ってきた。
もぞもぞとベッドに潜り込むから、そっと腕の中へと招き入れる。


「どうした?」

『…眠れない』


こうやって僕の部屋へと来るのも何度目だろうか。
いまだに子供っぽさが抜けきらない彼女は、きまぐれに訪れ、僕と眠る。そんな彼女を仕方ないと思いつつ可愛いと思ってしまうのは、家族の愛情か、…異性としての愛情か。


「また昼寝でもしたんだろ」

『違う。怖い夢、見た』

「…どんな?」

『征十郎がいなくなる夢』


その夢も、何度目だろうか。
その度に抱きしめてやるのに、何度も何度も、その夢を見る。
僕がお前を離すわけないのに。


『お願い、離れていかないでっ…』

「どこにも行かない。だからもう寝ろ」


そういってくしゃりと頭を撫でてやると、涙に濡れていた瞳は閉じられ、すうすうと寝息を立て始めた。



「…不安なのは僕の方だよ」



いつかなまえが離れていくんじゃないかってね。




離れ離れになるその日まで、きみと一緒にいさせて



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