『…征十郎』
「ん…なまえ?」
太陽と入れ替わりに満月が頂点に立つ午前零時。突然の訪問者は、かちゃりとドアを開けて部屋へと入ってきた。
もぞもぞとベッドに潜り込むから、そっと腕の中へと招き入れる。
「どうした?」
『…眠れない』
こうやって僕の部屋へと来るのも何度目だろうか。
いまだに子供っぽさが抜けきらない彼女は、きまぐれに訪れ、僕と眠る。そんな彼女を仕方ないと思いつつ可愛いと思ってしまうのは、家族の愛情か、…異性としての愛情か。
「また昼寝でもしたんだろ」
『違う。怖い夢、見た』
「…どんな?」
『征十郎がいなくなる夢』
その夢も、何度目だろうか。
その度に抱きしめてやるのに、何度も何度も、その夢を見る。
僕がお前を離すわけないのに。
『お願い、離れていかないでっ…』
「どこにも行かない。だからもう寝ろ」
そういってくしゃりと頭を撫でてやると、涙に濡れていた瞳は閉じられ、すうすうと寝息を立て始めた。
「…不安なのは僕の方だよ」
いつかなまえが離れていくんじゃないかってね。
離れ離れになるその日まで、きみと一緒にいさせて
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