[ハ]短編
□掴める位置
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次の日の部活
舘白は髪を下ろしていた
他の皆はまだ来ていない
「何で髪おろしてんの?」
少し間を置いてから彼女は言った
「髪を掴まれるのが嫌だから」
─丁度いい位置にあったのに。
「なんで?」
「な、なんでって......」
後ろを向いたまま舘白は
振り返らない
─いつもならあるんだけどなぁ
─この辺に、
ひょこひょこって
気付いたら彼女の髪に触れていた
僕のゴツゴツした手は
この綺麗な髪には合わない
「つ、月島…?」
不器用な手付きで
いつもの位置へ髪を持っていく
「あんたの髪はこの辺にないと
落ち着かないんだよね」
女の髪を結うなんて
一生ないと思ってたけど
「あんなに鬱陶しがってたくせに」
「気が変わった」
─僕は素直じゃないからね
「気が向いたら結んでてあげる」
素直じゃないのは
お互い様で。
fin.