ロメオ

□勉強会
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「時村〜また数学赤点だぞ」

「ちょ、またって!なんで皆の前で言うの!!」

「お前が懲りないからだろ」


皆からクスクス笑われる


「〜〜〜っ」

席に戻る時に華代に苦笑いされた

「あんた、大丈夫?
誰かに勉強教えてもらったら」


「…うーん」

この前は何やかんやあって染谷に少し教えて貰えたけど、なんか頼みづらいし


「はあ…」


「数学は今回も染谷が満点だったな」


(ま、満点!?何それ凄いを頭通り越しておかしいよ!!)

「勇次郎、すごーい!!」
「本当かっこ良くて勉強も出来るなんて完璧〜!」

ファンがキャーキャー騒ぐ。


(はあー、なにそれ。)

「顔も良くて頭脳明晰でアイドルって…悪いところ性格しかないじゃん」


「なんか言った?渚」
「へ?」

華代に聞かれて不思議に思うと
後ろから肩をつつかれ振り返る

「聞こえてるよ」

「っ?!」

頬杖をつきながら爽やか笑顔が
私に向けられた

「ごめんなさい、つい…」

危うくバレるところだった
笑顔なのに黒いよ。染谷さん

謝るとそっぽを向かれた


(かわいくな〜〜!)


休み時間になり隣のクラスの瑛はやって来た

「よ、渚。テストどうだった?」

「あー、えっと…」

「聞いてよ〜この子数学追試なの」

「まじで」

「ちょっと華代ー!」

「染谷くんもびっくりしたでしょ!
目の前がアホすぎて!」

(なんで染谷に振った!?)

「あはは、まあ苦手なものは誰にでもあるよね」


「染谷くんてば優しい〜」

華代は目をハートにさせてデレデレしている

(絶対内心クソ馬鹿とか思ってるでしょ。)

「瑛こそどうなの」
「俺?85点」

「嘘でしょ!?めっちゃいいじゃん!自慢しに来たの?」

「ちげーよ!どうだったのかなーって」

「お生憎様赤点です。
もう休み時間終わるよー」

「あ、やっべ」

休み時間が終わって
瑛も教室へ戻った


「今日は染谷と時村が日直だな〜
悪いが2人で資料取りに行ってきてくれ」

「えーめんどくさ」

「渚、文句あるなら追試厳しくす「すみません!行ってきます」




──「お前ほんと凄い馬鹿だよな」

第一声それかよ、みたいな


「喧嘩売ってんの?
てかやっぱ内心そう思ってたんだ」

「当たり前じゃん」

「キライ。」

「どーも」

「……」
仲良くなれたかと思えば嫌味だし…


「勉強どうすんの?」
「え?あ。んー瑛にでも教えて貰おうかな」

一瞬染谷の方がピクっと動いた

「…染谷?」


(どうしたんだろ、黙って)



「…勉強」

「?」


「僕が教えてあげようか?」

「え?」

「追試まで」

「ほんと!?いいの?」

「仕事の日以外なら」

「ありがと〜!まさか染谷から言ってくれるなんて思わなかった!」

「その代わり休み時間と放課後僕が独り占めするから」


「?
なんでもいいよ!キライとか言ってごめんね!」

「それは今でも思ってんだろ」
「ほんとに思ってたら勉強教えて貰いたいとか思わないって!」

「ふーん?まあいいけど。
今日の放課後は無理だから明日の休み時間からね」

「はーい!!」


───お昼休み

「お腹空いたー!」

「昼ご飯と勉強道具持って図書室」

すれ違い際に告げられる

「え、ご飯まで!?」

ジロっと睨まれたので
渋々図書室へ向かう




───『ガラガラ』

(……ん…
あ、寝ちゃってた)


意識は覚めたが、頭がボーっとする


「寝てんの?」

染谷が戻ってきたみたいだ

起きてる、と言おうとしたが
声が出ずに言葉が詰まった

(やばい、怒られる)


無理やり体を起こそうと思った瞬間
頭に優しい感触があった

「お疲れ様」

そう言って優しく頭を撫でられる


(え…な、何これ///)

驚いて一気に目が覚めたが
とても起き上がれる状況ではない

心臓も鳴って止まなかった

ようやく音が止むのを感じると
体を起こした


「ね、寝ちゃった!あ、ははー」

不自然極まりない。

染谷の顔が見られなかった


「…さっき起きてただろ」

「ごめんなさい。丁度起きてた」



「ま、いいけど。さっきのは頑張ってるからご褒美」

“ご褒美”という響きにドキっとする

「それにしても最初は追試も無理だろうなって思ってたけど」

「え、何それ!」

「何も分かってなかったじゃん。
テスト何点だったの?」

「じゅ、12点」

「よくこの高校入れたね」

「こんなの数学だけだし。まあこの前も染谷に教えてもらったけど…」

「時村って僕がいないと駄目だな」

冗談っぽく笑う染谷

普段笑わないからか
こんな笑顔を見せられると戸惑う

「え……?///」

「何だよその反応…///」

私の赤面がうつったみたい
何この照れくさい状況

「追試明日だからこうしてるのも最後だね。お昼一緒に食べたり」

「…うん」

「よく考えたら最近ずっと一緒にいたから変な感じ」

「追試までお前のこと独り占めするって言っただろ」


真っ直ぐな目が私の視線を釘付けにする
目が逸らせない

何も言えないでいると
染谷が立ち上がった

「じゃあ明日頑張れよ」


そう言って染谷は図書室を後にした


(……何だろう…この気持ち)



───「あ、今日はお昼教室なんだ!最近あんたどっか行ってたからさ〜」

「あはは、ごめんね〜」

へらへら笑ってるけど
後ろに座っている染谷が気になる


今日は普通だった
というか話していない

チラっと視線を飛ばすが目は合わない

(お昼2人で食べたいなー、なんて
私のわがままなのかな?)


あの時間が楽しかったから
今は寂しく感じてしまう


次の日、勇気を出してみる事にした

4時間目に入る間際、後ろを振り返り染谷にだけ聞こえる声で囁く


「お昼ご飯持って図書室」

いつしか染谷に言われた言葉
そこに勉強道具は含まれていない


ただ君のことを知る為の時間

(来てくれないかもしれないけど)


お昼休みに入り先に図書室へ向かって待っている

5分くらい経った時だった──

『ガラガラ』

「ほんとに…きた?」

「何だよそれ。来いって言ったのそっちじゃん」


「え、別に…来いとは言ってないもん」

照れ隠しでそんな事を言ってしまった


「あっそ。じゃあやっぱ教室で食べよ」

「あ、待って待ってやだ!
ごめん。ホントは来て欲しかった」


焦った私はドアに手をかける染谷の腕を必死に掴んで止めた

「追試も終わったのに何で誘ったわけ?」


少し悪戯な顔で質問してくる染谷はイジワルだ

「もっと…一緒にいたかった、から」

「へぇー僕と2人でいたいんだ?」

不敵な笑みを浮かべながら顔を覗き込んでくる


「そうだよ!染谷が嫌なら…いいけど」


「僕ももっと一緒にいたい」

「え…?」

頬を赤に染めた少し仏頂面な染谷と目が合う

時間か止まったように静かだ
でも胸の鼓動だけは大きく鳴っている

見つめあって10秒ほど


「好きだよ」

胸の奥がキュッとなった


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