姫が武士

□女の生きる道
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「君菊様?」

「さよ…」

さよとは邸の下女。

「徳川様からはどんな…?」

「祝辞を頂きました」

「まぁ!」

さよは私より少し年上の下女。
優しい娘だが、少々口が滑りやすい質である

「はぁ…憂鬱」

「なにをおっしゃいますの。お相手は御旗本でございますよ?」

「旗本…」

「申し分ございませんよ。物騒な世の中ですが、よいご縁で…」

近年、井伊大老が暗殺されたという事件もあった。
世の中がどうなっているかもわからない。

「私、気が進まない」

「進まなくても、女は逆らえませんよ」

「…そうですよね」

この時代、結縁などというものに女の意志は関わらなかった。
ただ、両親や相手方の意志で全ては決められた。


「そんなお顔なさらないで…せっかく御美しいのに」

庭に小鳥が舞い降りた。
私は其れをいとおしげに眺める。

「いいな…」

「なにがですか?」

「鳥。私、自由に飛びまわりたい」

「君菊様ったら…まだご自身の幸せをわかっていらっしゃらない」

「わかっていますよ」

でも…この冒険心がそれを素直に受け入れようとしない…―

「それなら、もう少し女になってくださいな」

「私、男と間違えて生まれてきてしまったのかも…」

「ほんと。」

その言葉にさよは可愛く笑う

兄上は温厚で忠実な御方なのに対し、私ときたら全く自由奔放の冒険家。
趣味で剣の指南も受けている。母には護身のためと誤魔化してはいるが…

「こんな時代に、私は何も出来ずに終わる…そんな無念なことないです」

「それなら君菊様は、御侍さまになりたいんですか?」

「そうねぇ…兎に角、自由に生きたい」

「世の中そんな安かありませんよ」

「そうなの…?」


何も知らない…

知りたい…

激しい好奇心

夢みる世界

気ままに外出して

一人で夜道を散歩したい


自由に生きる

それが私の夢
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