Aggressive

□プロローグ
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私たちが暮らす世界とは違う裏の世界の物語―


片腕を付き、息を荒らげる屈強な剣士。
その肩には白刃が載せられていた。
ギラリと光る白刃を見て剣士はヒッと小さく呻き声を上げた。
白刃を付きつけていたのはまだ成人もしていない少年だった。
その目には光もなければ意思もなかった。
只淡々と眼前の獲物を見据えていた。
剣士はもごもご口を動かして必死に伝えようとした。
「こ、こ、殺さ…な…いっ、で…」
瞳は涙で潤み、手はガクガク震えていた。
恐怖で顔はしわくちゃになっており直視出来ない―いやしたくないほどであった。
最期まで命乞いする剣士を見て少年は一言、
「みっともない」
囁いた。
次の瞬間、白刃は標的を切り裂いた。
赤が飛び散った。
標的は後ろに剃るように倒れた。
飛んでいったモノがコロンところがった。
それを見て少年は何も言わず剣を鞘に収めた。
観客が狂ったように叫び喚き、金を撒き散らし、熱狂した。
割れんばかりの歓声を背に少年は立ち去った。
客を冷たい瞳で一瞥した後に。

命をかけてまで金が欲しいか―

少年は剣を投げ捨てて会場、いや賭博闘技場を後にした。
元の世界には戻れない。
まともな世界には戻れない。

暗い狂った世界に生きるしかない。


覚悟した筈なのに―…


汚い人間達の物語。

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