APH

□コントラストと領域
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手を伸ばせば触れ合える距離に居る時は遠慮なんてせずに抱き寄せる。
「恥ずかしくないの?」ときかれた事もあるが、全くそんな事はない。だから好きだと思ったらいつでも何度だってその都度伝えるし、行動にだって起こす。
「私は恥ずかしい」と言ってすぐに目を逸らすけれど、それは逆効果やろと思う。
火がついてしまった状態ならば、より加虐心を煽られるし時には扇情的にも見える。俺ってSなんかなぁと思いながら、照れる姿をもう少し見たくてついついいじめてしまうのは悪い癖だ…直す気はない。

そもそも今日は悪くないと思う。
珍しく彼女が気持ちを伝えてきたかと思えば、胸に頭をすりすりとうずめて背中に手を回してきたのだから。
これには俺だけじゃなく世の男性諸君は期待せざるを得ないだろう。
キッチンじゃなければそのまま押し倒す勢いだが、なんとか理性を手放さないまま勘違いだった場合の威嚇の意味も込めて、帰してあげへんよと言えば無言だった。

「・・・え、期待するけどええの?」

「・・・」

据え膳は遠慮なくいただくに決まっている。
抱きしめてる腕の力をゆるめて、移動しようとひょいと横抱きにしてみてばカクリと首が揺れる。

「うそやん…」

情けない声が出た。夢と期待が膨らむだけ膨らんだオチがこれとは・・・

「寝てもうたん?」

長い睫がぴくっと動いて持ち上がる。目が合ってるようで合っていない。

「あ、ごめ…飲みすぎた、かな…?アントー…ニョ、あったかいから…なんか、ねむ・・・」

それだけ言うとまた睫が降りてゆく。
本音を言えば「えぇー!!!そんな事言わんと1時間でええから我慢してぇぇ」だ。
数十分前に彼女のグラスにワインを注ぎまくった自分を後悔しながら、あーあ…という気持ちでそのままベッドルームへと運んだ。

名残惜しいままベッドに寝かせると、冷えたシーツに身じろぐ彼女から「ん…」と聞こえてきて、目にも耳にも毒だなと思う。
いくらなんでも寝ている女性を襲う趣味はないが、十分に高揚している今の自分は理性がいつはち切れるか解ったものではない。

「…シャワー浴びよ」

頑張った自分を褒めながらシャワールームへと移動した。
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