APH
□くせにって言うな
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ありがとうございましたぁ!
手のひらサイズのピンク色の包みをニコニコとした店員さんから受け取る。
自分用だが誕生日だからと言うとご丁寧にリボンまで付けてくれた。
前々から欲しかったアクセサリーを奮発して購入した。
人気商品ですよ
最後の1点ですよ
なんてお決まりの台詞には決して惑わされないが、これは別だった。
一目見た時から気に入り、店の前を通る度ずっと悩んできたが、誕生日の自分へのプレゼントという理由で今回は「ヨシ!」と意気込み店内へと入り、ものの2〜3分でこの状態だ。
財布には大打撃だが、ついに手にしたという満足感は大きい。
軽い足取りで小さなピンクをぶら下げ、店を出た。
時計を見れば15時を少し過ぎている。
お茶でも飲んでから帰ろうと、隣接するカフェへと足を向けると見覚えのある無造作すぎる金髪が目に入った。
「何してるの?」
「お前こそ。ん?何だよそれ」
声をかけると相変わらずの不機嫌そうなその態度に、相変わらずだなとむしろ安心する。
右手で揺れるピンクを見ているので、聞きたい?と言えば別にと返された。
買ったばかりなのもあって、誰かに聞いてほしい気分でいっぱいだっため、お茶でもしながら聞きなさいよと言えば、おごりならまぁ良いだろと承諾した彼を、何名様ですかと尋ねる店員さんに2人ですと答えてテーブルに着く。
「見て!可愛いでしょ」
紅茶を2つ頼み、可愛らしく結ばれたリボンを解いて小さな箱に入った華奢なデザインのネックレスを見せる。
「よく見ると留め具のところにまで細工がしてあってね」
ほらほらと見せると
「あー」
と一言だけだった。
まぁ仕方ない。相手は男性だ。しかもアーサーだ。可愛いものにキュンとなる女心なんて解るはずも無かろう。いや、解っても気持ち悪いけど。
「まぁ…似合うんじゃねーの」
明らかに人選ミスだと諦めていたら、思いがけない言葉をかけられた。
え?と顔を見ると、少し照れた様子だ。あぁ褒めてくれてるのかと嬉しく思っていると紅茶が運ばれてくる。
ミルクを入れてまぜながら、こちらまで照れてしまった気持ちを隠すように説明を続けた。
「同じシリーズの指輪もあって、それもすっごく可愛くてね」
「じゃあそっち買えば良かったじゃねーか」
「指輪は自分に買うものじゃないかなって思うの」
「なんだそれ」
やはり女心とは程遠いこの男にソレを説くのは無謀で無意味かと思うが、まぁこの先何かの役に立ってくれればと説明した。
「やっぱりね、ほら、指輪は貰いたいものなの。それが女心というやつなのよ」
「そういうもんか?」
「人によるとも思うけど、私は…ね」
「ふーん」
頬杖を付きながら興味無さそうに返事をして、ぼんやりと窓の外へと視線を移すアーサーに、ほらね無謀で無意味だったじゃないかと思う。