APH

□写真
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 「わ、カッコいい…」
引出しからペロリと半分顔を覗かせていた物があったので、何だろうと思い確認すると古ぼけた写真だった。
そこに写っていたのは今より少し若く見えるが、今よりももっと鋭い雰囲気のあるアーサーだった。

おそらくやんちゃしていた頃のものだろう。
人づてに話を聞いたことはあったが、こうして実際に見るのは初めてだ。

あらあら尖っちゃってまぁ…生意気な、と思ったがそれが可愛くもあり恰好良くも見えた。

へー、こんなんだったんだー
…この写真欲しいな




 彼は照れ屋だ。
自己主張し、存在を確かめるかのような節が見られるそんな子どもじみた所があるくせに、主張を確認するにはうってつけのカメラを向ければそっぽを向き、あまつさえ「なんだお前、ポラロイドじゃないのか」と訳のわからない事まで言ってくる始末だ。

長年の勘が正しければ、本当はすごく撮って欲しいのだろうと思う。ただ彼を形成する上で三割程度占めているんじゃないかと思われる「照れ」の部分が邪魔をしているのだ。
面倒な人だが、同時に愛おしくもあるのだからどうしようもない。



「アーサー、これ欲しいから貰ってもいい?」

「なんだそれ」

ひとくち飲み、手にしている紅茶に視線を落としていた彼が確認するように顔をあげる。
と同時に盛大に咽てしまった。

「な、なんだこれ…!なんでこんな古い写真。どこで見つけた?」

ごほごほと咳き込みながらも息を整えて写真を奪おうと手を伸ばしてきたので、必死で抵抗を試みる。

「あっちの部屋のチェストの引出し…って破れちゃうから離して!」

「いっそ破れちまえば良いだろ!」

ぎゅうぎゅうと右へ左へと写真が引っ張られる。
ただでさえ古ぼけた写真だ。耐久性には期待できないだろう。ここで破れてただの紙にさせるには惜しい1枚だ。

「もう!」

仕方が無いのでパッと手を離すと、急に抵抗がなくなった事により勢い良くおしりを強打した彼が痛ぇ!と叫ぶ。

「あ、ごめんね」

「ごめんねじゃねーよ。ったく、しょーもねーもん見つけてきやがって」

「しょーもなくないよ、カッコいいのにー!だから頂戴」

ハイっと両手を差し出すとパシっと叩かれた。くれる気は無いらしい。

「なんだよ、その言い草じゃあまるで今の俺はダサいとでも言いたげだな」

あ、拗ねてらっしゃる…

「そんな事ないよ、例えどんな地味な服でも紳士に着こなすのはアーサーの魅力の一つだよ、それってすごくかっこいい」

「バカにしてんのか」

差し出したままの手のひらに再び衝撃が走る。



「良いじゃない、写真くらいー」

「しつけーよ!」

その後も、ねーねー!と腕を引っ張ってしつこく食い下がると新聞を読んでいた彼がイライラした様に言い放つ。

「あ、もしかして私が「カッコいい!」なんて言ったから、過去の自分にやきもち?」

冗談で言ったら、信じられないくらい顔を真っ赤にして「バッカじゃねぇ!」と言って目を逸らした。
こちらも長年の感が正しければ、これは相当照れている証拠だ。

思わぬ表情が見れて、顔がほころぶ。
過去も大事だが、やっぱり今の彼が一番愛おしい。

ギュっと腕をくむようにくっついた。

「隙あり!!」

驚きこちらを見た瞬間を狙って、用意していたカメラのシャッターを押した。

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