WORKING!!2
□猫っぽいのはむしろ
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顔の半分が隠れているせいもあって佐藤さんの表情は読み取りにくい。
そんな金色の壁があるにも関わらず彼の表情が一瞬固まった様に見えた。
「なんでコレ?」
私が「どうぞ」と渡したソレから視線を動かすこともなく一言問う彼に「え、だって似てません?」と答えると「何が?何に?」とまた問われた。
「このネコが、佐藤さんに」
「…お前どんな目してんだよ」
先週末に家族旅行をした。
バイトはお休みを貰ったし、勿論皆その事を知っているので日頃お世話になっているのもありお土産を用意した。
ほぼ店長向けと言っても過言ではない16個入りのおまんじゅうの他に、キーホルダーも買ったのだが、どうやら目の前で固まっている佐藤さんはそれが気に入らなかったらしい。
「確かに、キーホルダーって……って話しですよね。すみませんセンスなくて」
「いや、そういう意味じゃねーけど」
「おまんじゅうもあるんですけど、よくよく考えたら佐藤さん甘いもの苦手ですよね?重ね重ねセンスなくてすみません」
「いや……もういい」
何かを言いかけた佐藤さんは諦めたように小さく溜息をついた。
実は佐藤さんへのお土産が一番に決まったんだけど……とは言えずしょんぼり。
黒猫のモチーフがちょこんと付いているソレは男性が持っていてもおかしくは無いと思ったが、どうやら私の価値観がおかしかったらしい。
何よりその黒猫は佐藤さんに似ていて一目見て気に入ったのだ。
「どこが似てる?」
てっきり諦めついでにタバコでも吸いに行くのだろうと思っていたので声をかけられて驚く。
「このネコですか?」
「似てると言われても共通点が見つからん。コイツ黒いし」
つまり金色の猫なら納得できたという事だろうか?
手にした黒猫を黒いと当然の指摘をする佐藤さんに思わずププっと笑うと「何だ」と少し不機嫌っぽく照れた様子で返された。
「いえ、確かに黒いなぁと思いまして」
私の発言に、なおも「解らん」と漏らす佐藤さんに「毛色じゃなくって、目です」と教えてあげた。
「目?」
「はい。よく見て下さい、このコ目が片方スワロがはめ込まれててキラっとしてるでしょう?」
そう言い指差したのは黒猫の瞳。
向かって右目は体と同じ黒い石がはめ込まれているのだが、左目はキラリとカットされた金色のスワロフスキーがはめ込まれているのだ。
「ね?佐藤さんと一緒」
「どこが」
「こっちだけ瞳が目立つところ」
そう言うと、呆れたように「よく見つけたもんだな」と言われたので「愛ですかね」と冗談で返せばまた表情が固まった気がした。