WORKING!!2
□不変を語ろうか
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「前から思ってたけど」
珍しく彼女がジーっと顔を覗き込んできたので「まさか彼女の方から何かしらのアクションが?」と期待したのも束の間、特に想像したような嬉しい展開もなく疑問を口にするだけだった。
「なぁに?」
「相馬くんは童顔よね」
「え、なにそれ」
前からっていつから?
同級生である彼女とは長い付き合いであるとともに年齢も同じだ。
同じ歳の人に「童顔」と言われても何だか釈然としない。
「「ドス」を付けても良いくらい黒い部分があるからつい忘れがちだし意外なんだけど、相馬くんは昔から童顔だったよ」
「そんな事ないよ」
ドスだとか黒いだとか童顔だとか色々と数ヶ所含めて否定してもスルーされて「その証拠にさー」と言いながら卒業アルバムを開いた。
「全然変わってないでしょう?」
そう言って指差したのは高校時代の俺。
なんとも毒にも薬にもならないような人畜無害の笑顔で写っている。
「勝手に開かないでよ」
「いいでしょ?どうせ家にも同じのあるんだから」
「ここで嫌がったところで帰宅して好きなだけ見るだけだよ」と笑顔で言い放つ彼女は少々腹黒いと思う。自分が黒いと認めるわけではないが、長い付き合いの中で俺のソレが伝染してしまったとでもいうのだろうか?
「私なんか確実にこの頃とは違うよ。良く言えば落ち着いたけど、悪くいえば老いたよね」
「老いたって……人聞きの悪い」
「そこは「全然変わらないよ」とか「今の方が綺麗だよ」とか言うべきところなんじゃないかなぁ」
「うっ……」
彼女曰く、俺は女心というものに対する理解に欠けているらしい。余計な事には用意周到、完璧にこなすくせに肝心なところは抜けすぎ!だと言われた事がある。
「もう」と言いながらプクっと頬を膨らます彼女はまだあどけない様に見える。
「全然変わらないのはお互い様じゃない?」
「え?」
今度は瞳をくりくりと見開いた。
よく変わる表情のおかげでその全てを見逃すまいと俺が常に必死で彼女を視界に捕えている事を彼女は知っているのだろうか。
「相馬くん?」
「その呼び方も変わらないね」
熱を持ち始めた俺の視線に気付いたのか、照れた時に見せる伏し目がちな表情をもっと近くで見たくて両手で頬を掴むとみるみる内に赤くなる。
「はは、いつまでも初々しいよね」
「あ!今、馬鹿にしたでしょ!」
「まさか。可愛いなって思って」
両手に包まれた頬が再びみるみる赤くなった。
「昔も今も変わらないよ」
変わらない。
そこには俺の気持ちも含まれているんだよと、言葉の代わりにキスをひとつ。