APH

□心音と体温
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男性を強く意識する事なら他にもある。
いつもは陽気に輝いている碧色の瞳が、こうして近くで触れあっているふとした瞬間にキラリと光るのだ。
その瞬間が嫌いではないし、むしろ自分しか知らない一面が何より嬉しいとすら感じる。
今はその目をしているだろうか?まるでここが居場所かのように胸におさまっていた頭を持ち上げ、顔を見上げる。

「どないしたん?そんなに見つめて」

優しく微笑んでいたが、その瞳の奥はやはりキラリと輝いていて、ドアを開けてくれた先ほどとは違った大人っぽい彼がいた。

「うん…アントーニョの事やっぱり好きだなぁと思って」

珍しいものでも見たかの様に目を見開いたあと、ぎゅぎゅうともっと強く抱きしめられ、

「あんまり可愛い事ばっかり言うてると、帰してあげへんよ」

と耳元で囁かれた。
お腹の辺りにジーンと響く低い声に、またドキリと心臓が跳ねる。
こんなにドキドキする。こんなにも男性なのかと今更ながら深く理解する。
今後彼に対して「可愛い」という形容詞を発することはないだろう。
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