APH

□くせにって言うな
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 元あったように箱に入れて、袋へと戻すと付けないのか?と言われた。

「いいの、今度つけるから」

何でもそうだが、買ったものはひとまず家に持ち帰りひとしきり愛でたあとに使用する。今回も例によって、だ。


他愛のない会話をしているとお手洗いに行きたくなり、ちょっとと言って席を外した。

席に戻るとアーサーの姿は無かった。
着ていたコートはそこにあったので、彼もまたお手洗いなのだろう。
時計を見ると一時間が過ぎていた。
そんなに経ったかと驚き、チラリと横に置いてあったピンクの袋を見ると、似合うんじゃねーのと言われた言葉を思い出してふふっと笑顔になった。

「なに笑ってんだ?」

戻ったアーサーが不思議そうに眉毛を片方吊り上げている。
なんとなく、アーサーの発言でにやにやしていた事実を否定したくて、別にと先ほど彼がそう言ったのをマネして返した。

「なんだよマネすんな」

「別に」

再度マネしてやる。
すると無言になったので、からかいすぎたかな?と焦ると

「ほんっと可愛くねー。気が変わりそ」

そう言って席に着く。頬杖をついて再び窓の外を眺めた。
焦った私の様子に気付くと、にやりと笑った。

「せっかくやろうと思ったのに」

見覚えあるピンク色の袋を目の前でチラつかせる。
えっと思い、いつの間に取ったのだろうと自分の横を見ると同じくその袋は確かにある。
え、じゃあこれは何だろう?

混乱してさぞかし間抜けな顔をしていたのだろうか、彼ははははと笑うとソレを机の上に置いた。

「やるよ、それ。誕生日なんだろ?」

「え…なに?」

「開けてみ」

ぶっきらぼうに指差しながら言うので、デジャヴだなと思いながら先ほどと同じようにリボンを解く。
中から小さな箱を取りだし開けると、私が話していた指輪があった。

「欲しかったんだろ」

びっくりして何も言えない。
まさか、あのアーサーが…女心なんて到底理解できないであろうあのアーサーが…!
嬉しさと恥ずかしさとほんの少し悔しくなって、思わず本音が漏れた。

「こんなの…アーサーのくせにカッコいい!」

「くせにって言うな。やらねーぞ」

「嫌!もらうもん!」

慌てて自分の指にはめる。
左手の薬指は違う気がする。うーんと悩んで右手の薬指にした。

「でも、良いの?」

値段なら知っていた。それなりに高価なものを貰ってもいいのだろうか。

「もらっとけ」

誰かに先越されるのも腹立つしな
そう言って、赤くなった顔を隠すようにまた窓へと目を向けた。

それはつまり、指輪を最初にプレゼントするのは自分が良かったって事だろうか?
・・・
そんなの・・・

「アーサーのくせにカッコいい!」

机をドン!と叩いた。
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