WORKING!!
□そのためのスペース
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「危なかった…」
ふぅと息を吐くと、隣に立つ相馬さんがニコニコと笑っている。
「笑いごとじゃないですよ、何言ってるんですか」
「だって本当の事じゃない、そこだってまだ残ってるんでしょ?」
俺が付けたキスマーク
そう言って、開いたスペースを指でトントンと示す。
キスマークだなんてフレーズ、それだけで恥ずかしいのにさらりと言ってのけ、ナチュラルに仕上げたソコへ直に触れる指を嫌でも意識してしまい何も言えないし何も出来ないでいた。
「やっぱり」
触れられた拍子に剥がれたのか、うっすらとした痕が現れる。
「ホント、残りやすいよね」
ニコリと微笑む彼に、また付けられるのではないかと警戒し距離を取る。
「そうです。青あざも治りが遅いですし、出来ると本当に困るんです」
遠回しに威嚇するが、果たして効果はどうだろう?
「治りが遅いのはビタミンCが足りないって聞いたことあるけど」
うーんとまじまじと膝にある青あざを見ている。
意外と効果はあったかもしれない。
「あと、最初は冷やしてあとは温めると早く治るらしいとか」
どれも本当かは知らないけどね
そう付け加えて、膝に注目した事によりすっかり安心しきっていた私の隙を突くようにして三度目のしるしを付けようとする。
「ちょ…」
止めるよりも早くピリっとした痛みが走ると、サラサラとした髪が痛みを和らげるようにして撫でて相馬さんは離れた。
「個人的には、色白の人は血管が見えやすいから青あざもいつまでも見えるっていうのが一番の理由だと思うけど」
「青あざじゃない場合はどう説明するんですか」
ピリピリとうずくコレは青あざではない。
また暫くコンシーラーで隠さなければならないなと思いながら、皮肉をぶつけてみる。
「『同じところばかり、虫に刺されちゃうんだよね〜』って言えばいいと思うよ」
何の説明にも解決にもなってはいないし、もし私のマネをしたんだとすればセンスを疑う出来であったが、思っていたよりもずっと、虫扱いされた事に腹を立てていたんだなと思う。