自適
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深夜。



窓にあたる雨の音で浅い眠りについていた俺の意識は引き戻されてしまった



(今何時だろう…)



雨音が気になって起きたはずなのに、時間が気になった瞬間、時計の秒針がやけに響いて聞こえてくる

かといってわざわざ時計を見るのは億劫で、
そのまま意識を放とうとすると、もう一人の部屋の住人が動く気配がした。


「…ゆぅ太?」


俺を呼ぶ小声

少し擦れている


「…んー?」

落ちかけた意識をつなぎ止めて、口も開かないまま鼻だか喉だかで曖昧な返事をする。

それでは不満だったようで、今度はしっかり名前を呼ばれた
ついでに肩も揺すられる。

「…悠太」


重たい目蓋を開けると、思ったより近くに弟の顔があってドキリとした。


「…祐希、眠れないの?」


「うん、まぁ…そんなとこです。」


「昼寝なんかするから…」

「あー…、うん、だよね。悠太も寝てたのに、よく寝れるよね」

歯切れの悪い相づちをする弟
何か言いたそうだ。

勿論何を言いたいのかもわかってしまう

お兄ちゃん(双子)だから。

流されまいとゆっくり瞳を閉じるとすかさず名前を呼ばれる

「悠太…起きてよ」



弟はこの短時間に何度俺を呼ぶんだろう。

少しくすぐったい気持ちになって口元が緩んだ

誤魔化すために枕に顔を埋める。

「寝ないでよ」

「ふ、起きてます、
よ…」

「もー」

心地よく俺を包んでいた布団に冷たい空気が入り込む

「…んしょっ…」

「……ちょっと、祐希君。」

石鹸の香と一緒に少し冷えた肌がスルスル絡み付いてきて、またあたため直しだ…なんて思った。
自然と一人分詰める自分にも笑える。

「狭いなぁ…祐希君。」

「狭くないです」

「…枕取らないでよ」

「…だって狭…

…くないけど

…さ、むい」


ぎゅっと身体に絡み付いてきた腕と、首筋に埋められた弟の顔

喋る度首筋にかかる息がくすぐったい。
身を捩ると更に締め付けられた



「悠太…」

祐希は気付いているのだろうか
俺を呼ぶ声が甘ったくるなってる事に

「ね、」

昔からだ
祐希は甘えるのが上手で

よくも悪くも自分を知ってる。


(気付いてるよね…絶対)


俺がその声に弱い事をわかっててやってるから質が悪いんだ


「…寝、ますよー
祐ッ、

ん…」

「ゆーた君、

あっそびーましょー」

「ヒァッ…こ、ら!祐、希ッ」

「目、さめた?」

首筋をべろりと舐められて、いらない声がもれてしまった
恥ずかしくて唇を噛む。

祐希の右手が内股を行き来する


「ちょっと、どこ触ってるの…」


制止の意味もこめて祐希を見るとしっかり目が合った。
暗がりなのに祐希の瞳がギラギラしてるように見えるのは、気のせいにはならないのか…

「さぁ?
どこでしょう。」


誰かこの小悪魔を叱って下さい


(俺の代わりに)




弟は無遠慮に布の上から俺のを撫で上げた

少しの躊躇もないものだから、悪い事じゃない気すらしてしまう。

腰を引こうにも後ろは壁。

「ッ…」


祐希の手首を掴んでみても身体自体が密着してるこの状態で当たっているのは手だけじゃない

「悠太、興奮してきた?」

「…知り、ません。
お兄ちゃん、は寝るんです」

「…そっか、

じゃぁおやすみ悠太。」

「?…お、やすみ

ンッ!」

「いいよ?

寝て…」

「…ハ、」

(…眠れるはずないでしょ)

とぼけた顔で
どうしたの?なんてきいてくる弟
いつの間にか直接握られたソレは質量を増すばかり。

「ッ…ん」

わざと焦らす祐希の手に自分の腰が自然と揺れてしまう
祐希が気づく前に腹に力を籠めた。
声がもれて親の部屋まで聞こえてはまずいと枕に顔を埋めると、
雨降ってて良かったね。
なんて笑顔で囁かれた。


「腰も我慢しなくていいのに…」

「…ッ」

普段何でも頼りっきりのくせに、
寧ろ俺も祐希に頼られるのが好きだったりするのに

(こんな時だけリードするって何…)

どんどん熱くなる俺と涼しい顔の弟。

「…ゆ、…き、ャめて…眠れ、ナい、」


「それは困ったね」


やめてほしいのに、

違うのに、

自分から出た声は
先を求めてるみたいだった。
「ン、ッン…ハァ…」

クチクチとわざと押しつぶすように握られて、浅い呼吸が漏れる

喘いでるみたいで嫌だ


いやいやと思いながらも身体はもうされるが儘の状態で、
きっと今の自分は熱っぽい視線を向けてるんだろうなと悔しくなった


「ゆた…俺、のも、」


空いた手を俺の手に絡ませて自分の中心に連れていく
「ね?」

ずるい声…
すでに硬くなったソレを手の甲にすり付けてくる祐希

(本当自分に素直というか…)


いつか祐希のこんな姿を自分以外の誰かが知る日がくるのか

一瞬でもそんな事を考えると、言い知れない恐怖が込み上げて、時間が怖くなる。

カチカチ進む秒針がまた頭に響いている


口では否定してるくせに、離れたくないと願ってるのはいつだって俺の方


自分に依存する弟
そんな弟に依存する俺


すっと肺に空気を送り込んで弟のソレに手を伸ばした。

ぎゅっと手のひらで包みこむと祐希からも息がもれた。

同じだ

きっと感じる処も同じ。
無意識に好きなところをせめてくる祐希。

俺も同じようにシ返すとトロトロになって溢れだした。


「ン、ン、あ…」

「ハァ…」

目の前には目を細める自分にそっくりな顔があって、
二人でシテるのに、自慰のようだと思った。


目が合った祐希もそう感じたんだろう

どちらともなく唇を重ねてお互いの存在を確かめた。

一人じゃない。



唇が震えた。



後悔する日なんて来なくていい。


時計の音を雨が掻き消してくれるように願いながら、今日も溺れる






(ゆーたもう一回…)

(…しま、せん。)





 

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