□痛い痛い
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「…ッ」

いてぇ


階段を降りながら腰を擦った俺に祐希がおじいちゃんみたいと言った

誰のせいだよ

「うるせぇ」と力なく返すと今度は悠太が、要の場合は体の不調も怒りのせいだよ。なんて返した

だから

(誰のせいだよ、悠太。)


お前があっさり彼女なんてつくるから、その双子の弟は狂ったように俺にあたる
俺が断れない事を知っていて利用するんだから質が悪い。








*




「次はどうヤろうかな…」

「もういいだろ、本当…いてぇっつの」

時間があくと俺の家に来て、2人の時は大体ヤるだけ。しつこく何度も
俺が嫌がる事ばかりする。痛がる事ばかりする。


ムードなんて言葉コイツに求めるだけ虚しい

「あ、あッ、っ…」

「ね、かな、め
これ、…すき?」

「ャメ……ッ、すき、なわ…けッ、ねぇ、…だろ!」

「だよ、ね、萎えちゃってる」

無駄に口は開くくせに、
ねぇねぇとガキみたいな質問ばかりするくせに
俺の話なんて聞いちゃいない

「はい、気持ち良くなりたいなら自分でしなよ」

俺の手を俺自身につれて自分でマスかけと言う

「…ッ」

自分は好き勝手に俺でするくせに、自分の事は自分でなんて勝手なルールを作りやがった

いくら潤滑油を垂らしたって慣らさず入れられて快楽なんて拾えるわけねぇだろ

痛さを紛らわすためには自分で何とかするしかない。

後ろで腰を振るコイツに合わせ自分の手を動かし精一杯気持ち良くなる努力をする
最近漸く自分をごまかすことを覚えた

「ッ、…ァ、ヒゥ」

仕舞いには喉もカラカラになってかすれた声で喘ぐ俺の顔に、
何か飲む?なんて自身を押し付け果てる。
本当に最低なヤツだ。

「お前が、モテ、る意味がまったくわかんねぇよ」

「俺も。」

否定こそしなかったが、心底いやそうなその顔がまた痛々しい


「道具とか突っ込んであげたいけど、わざわざ買うのもバカくさいでしょ?」

大事な要の躯に俺の以外が入るのも気に入らないしね。

表情も変えずにつらつらと思ってもいないこと吐き出す。気持ち良くなるのはおまえだけだろ

最中俺が求めることは絶対にしない

コイツが演技をしないところも俺が傷つく原因になる


「もう、別れたんだろ。
よかったじゃねぇか大好きな兄貴が戻ってきて」

精一杯の俺の皮肉

「まぁ、カウントすらしてないけどね。やっぱり悠太を一番理解してるのは俺だけだったんです」

表情は変わらない
けど、これはコイツの本心だ。唯一嘘を吐かない部分
つけない部分

(い、てぇ…)


悠太が彼女と付き合ったことで始まった俺と祐希の関係は、別れた事で元に戻ると思っていた
実際日数にしたら本当に僅かな期間だったのだから。
勿論ここにくる理由も失ったと思ったのに、

(あの時、同情なんてモノをコイツに抱いた俺が間違いだった)

俺はかわらず、いつも通りに抱かれている。

("いつも通り"優しさもなく)

目に余る程傷ついた顔をするコイツをほっとけないなんて思っちまったんだ



何度目か果てたところで漸く祐希が服の乱れを整えた。勿論自分の服の、だ

ベッドはぐしゃぐしゃ、体は痛いし、顔は吐き出されたアイツのが固まりかけて表情を変えるたび違和感すらある

俺も起き上がって着替える
途中よろける俺を支えてくれる優しい人間は此処にいない。

「じゃぁ悠太くん帰ってきますんで、帰らないと」

(俺が呼び付けたみたいな言い方すんな)

「なぁ、祐希」

お前は中学生の時、自分は悠太に特別な感情がある事を俺にだけは明かしたよな

(あの時俺は…)

「失恋なんて、今どき幼稚園で済ませるもんだろ」

「何それ自分に言ってんの?」

双子なら当然悠太も自分を求めると思ってたんだろ。

「いい気味だな。」

「何言ってんの、かおり先生の事?」

置いてかれて、自分の苦手な"女性"にとられて、悔しかったんだろ
兄も、好きな人も。

「また明日ね」

机の上にあった俺のノートを攫っていく

悠太への言訳に使う気なんだろ


(そんな兄にだけは一途なお前を、俺に押し付けてきたのもお前の兄なんだぜ)

窓から見える祐希の後ろ姿を見えなくなるまで見つめた俺は短いメールを送った

[今帰った。]


お前の事は何でもお見通しな俺も、操り人形に過ぎないんだ







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