□今日も明日も3
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コンビニ従業員控え室

ガタッ
「……

…………此処にもねぇ…」
腹ばいになって棚の下も確認する

何日か前から見当たらないとは思ってたが、
先日の銀髪天パヤローのせいですっかり忘れてた。

家にないならここだと思ったんだが、どこを見ても見つからない。
別にアレじゃなくたってタバコは吸えるし、問題ねぇんだが、わりと気に入ってたんだ。


(可愛いだろ、マヨネーズ型とか……
…盗まれたか?)


「おはようございます、土方さん。」


「ッ!!!…お、おう。」

「あ、びっくりさせちゃいました?なんか真剣ぽかったんで、話し掛けるタイミング逃しちゃって…」

「し、てねーよ…」

腹ばいのまま答える
少し恥ずかしくなったので咳払いして立ち上がった

「何か捜し物ですか?」

キョロキョロしながら山崎がしゃがみこむ

「あぁ、そんなとこ、…です。」

俺は別に汚れちゃいない服を払う

「敬語いいですって、今まだ仕事でもないですし。
まぁ俺は年下なんでつかいますけどねー、気にせんでください」


そういって見上げた山崎(さん)がヘラヘラ笑うもんだから、気を遣った自分が馬鹿らしくなった

「で?何さがしとったんです?俺も手伝いますよ。」
ぐいぐい質問はしてくるが

良い奴だな、
と思う。

少しお喋りだが



「……ライター」

「ライターですか?
どんなのです?」

「その、マ、マヨネーズ的な…形の…なんだが」

「マヨネーズ、ですかー、珍しいですね!
すきなんですか?」


可笑しな事を言うヤツだな
と少し目を見開いた

「いや、嫌いなヤツなんかいるのか?…マヨネーズ」

「…アハハッ」

「此処にはねぇみてぇだ、ちょっと外の物置辺りも見てくるわ」

「あ、はい。俺もさがしてみますね」

「わりーな」









*

(みんなマヨネーズが好きだと思ってるんだろうなー土方さん


うん、

やっぱり可愛い。)

出ていった扉を見つめながら俺はポケットからマヨネーズ型のライターを取出した
先日まさにここで拾った落とし物だ

本当はすぐに返そうと思ったんだけど、簡単に
はいどーぞ。
と渡してしまってはまた、たいした会話もなく終わってしまう。

それじゃつまらない
もっと知りたくなったんだ。


(「ライターみませんでしたか?」
とか、聞いてくるかと思ったのになぁ)


待っていてもくる様子のない質問に、つい自分から聞いてしまった。

当初の目的は、仕事仲間として仲良くなりたいなー。とか、ちょっとした好奇心だったんだけど、


(あの人を見てると…

見てると…


……何だろう? )


そんな事を考えていたら仕事の時間になり、外から土方さんが戻ってきた。

心なしか落ち込んで見える。当たり前だが、見つからなかったんだろう
よほど気に入っているのか


俺は何食わぬ顔をしてライターをまたポケットに戻し、 ありましたか? なんて聞いてみる。

こっちも無かったです

なんて、平気で言える俺は意外と意地悪なのかもしれない



(なんか…

困らせたくなるんだよね…
…どうしてかな)



仕事中はいつもとかわらず真面目な土方さん
多少いつもより仏頂面なきもするけど、すべきことはきちんとこなす


休憩中はタバコも吸わずにまたキョロキョロと俺のポケットの中にあるライターを捜し回っている

俺は帰り際にまた声をかけた

「土方さん、元気出してくださいね?ほら、そんな顔しとったら男前が台無しじゃないすか、ね?」


「な、何言ってッ
いきなり…ヤ、野郎にんなこと言われたかねんだよ!」


わかりやすく動揺するのがおもしろい

「えー?だって堅いですよ?表情。もったいないなぁ」
からかうように笑ってみる

「ッセーよッ」

俺は顔を伏せる土方さんを覗き込んだ

「……」

「……ンだよ!見んな
あんま年上からかんじゃねェ」

「…アハハッ、冗談です。すいません!俺も探しときますから、元気だしてくださいね。」



じゃお疲れさまです
と店を出た俺は帰り道、自分の顔がにやけているのに気付く


(暗くて助かった…

だって、あんな表情
赤くなるとか
意外と…)


「アァァ〜ッ!!」


(もっと見たい!)

前を歩いていたOLが肩を揺らして振り返った
そのまま早歩きで逃げていく

(あ、すいません)

心の中であやまっておいた


少なくとも男に対してこんな感情になった事がない

おかしな気持ちのまま家の前まで着くと携帯が鳴る

だいたい予想はつく

あの三人のどれか

「もしもs

[あ、出た出た
もう店でちゃった?
今銀と向かってたんだー店、"一狩りいこうゼ"?
退ん家で!]


……弱いくせに?」


[総悟が組んでくれないんだよね]

「ゲーム弱いもんね、お前」
(喧嘩はヒクほど強いくせに)

[すぐ行くから

あ、飯もヨロシクー]

「…切れた」

俺はため息をついて携帯を閉じた。

するとまた着信が


(今度はメールかよ!)


乱暴に開いて中を確認する

未登録のアドレス

「な!…」

俺は焦って返事を打つ


<<お疲れ様です!
登録しときますね!
マヨネーズライターみつかりましたか(^∨^)?>>


(あー…ここは要らないかな?しつこい気が…

でも短すぎも…

いや、業務的なメールだしな

うーん…

これでいっか…?)

ポチポチと打っては消し、打っては消し…

(よし、送……んー…やっぱり…)


「何してるの?退」

ピッ

「ぅわッ!!
押し……

…早いですね、神威くん」

「そう?…寒いから早く入れてよ」

「……はいはいって、あれ?坂田さんは?」


「うん、店置いてきた」

「店?ふーん?どうでもいいけどね。
何食べたい?飯」

「たいしたもの作れないだろ?」

「今なら作れる気がするなー」
「機嫌いいね地味に」

「…ハハッ」

進展した
事務的なメールでも俺にとっては進展です。


(返信来るかな)
(変なメールじゃなかったよね)(送信先は間違ってないし)(あーもっと質問とか付けとけばよかったかな)(あ!…なんだ迷惑メールか…)


「ねぇ、飯。」

「……はいはーい」

.

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