□今日も明日も8
1ページ/3ページ

こないだみたいなノリはどうしたのか

目の前に座る天パは聞き手に回りやけに大人しい


ころころ変わるコイツの印象にもしかしたら双子の兄弟でも居るんじゃないかとすら思った





初めましてって…
からかったんだよな?

それとも他の奴らに知られたくないとか?別にやましいことなんか一つもないけど



そろそろ出るかと言ったのは俺だけど、
坂田と帰りが同じ方向で
まだ一緒にいれるうれしさ半分、山崎達がいねぇのが少し心細い


帰ェーるか と言ったっきり特に話をかけてくる様子もないコイツに、少し焦っていた


「あ、…の、」

「ん?何?」

「甘いもん好きなんだな…」

「まぁな、銀さんの半分は糖で出来てんの」

なんなら舐めてみる?なんて腕を見せてくる

いらねぇよと突っ込んでみるけど、なにかが足りねぇ

俺の気の持ち様だと言われりゃそれまでなんだが





「…」


「…」




また沈黙







これじゃ家についちまう






「…お前の家ってどこだよ?」

ふと思った、俺んちにかなり近くねぇか



「もうちょいだな、何?来る?今日ちょっと散らかってるかもだけどー」

「ちげーよ!」

モジモジする坂田は
残念だなーと笑った


あ、今度は少しいい感じだ

つられて顔が緩む





やっと調子でてきたっつぅのに見えたアパート





「じゃ、俺此処で」


「おー、じゃぁなって…え?」

同時に立ち止まった坂田


「…なんだよ、
部屋はあげねぇぞ」


「残念、じゃなくて…

このアパートなんだけど、俺の新居」



今日1日ずっと逸らしてばかりだった目がばっちりと合う


「…じゃ…じゃぁ隣に越してきたやけに騒がしいのって」

「…俺?

騒がしいは余計だ」



「…」



「まじでか!?土方くんなの?お隣さん!表札かけとけよ!」


「人のこと言えねぇだろ!」

「すげー!!ちょい部屋みせて土方くん!」



「は?ンでだよ!隣なんだなら変わんねぇだろ
理由つけてあがろうとしてんじゃねぇよ!」

「お隣さんだろ!みずくせーな、茶ーくらい飲ませろよォ!!」

「声でけぇんだよテメーは一々!迷惑だろ!ったく…」

図々しいヤツだ


「つーか、」


「あ?」

「やっと、"土方くん"

だな」



「…やっと…



………お互い様だろ」



「ハハッ…かもなー

あ、じゃぁ俺ん家来る?
イチゴ牛乳出しますけど」


「…いや、いらねぇ
じゃぁの意味もわかんねぇ


けど、

どんだけ汚ねぇか見てやらん事も…ない」



ニヤリと笑ったコイツはムカつくけど、正直気になる



「す、すぐ帰るからな!」

「隣にね

いらっしゃいませー」


ガチャっと坂田がドアを開けると、少し甘い匂いがした。坂田の匂いだ


お邪魔します
と遠慮がちに部屋に入る


散らかってはいるが似たような内装

テーブルの真ん中にケーキがあった痕跡だけがある




あいつ全部食いやがったな、と文句をいいながら
適当に座ってーと台所に立つ坂田


座ったはいいが落ち着かない
キョロキョロ目を動かしてまわりを見渡す



(あっちが寝室なのは同じか…)



開きっぱなしの扉から布団が見える…







「な!!」


「どうかしたかー?」


イチゴ牛乳を俺の前に置いて坂田が少し驚いた顔で不思議そうにたずねる



驚いたのはこっちだ



「…動、いた」


「え、まさかゴ「ちげぇ!」

坂田の言葉を遮りもう一度寝室に目をやる



俺の目線を辿った坂田は
ガバッと立ち上がり物凄い勢いで寝室に入っていった


(あれは人か?

寝てたよな?

同居?

同棲?

まさか…)

瞬時に色々な事が頭をよぎる


坂田は乱暴に布団を引ったくった


影になりよく見えねぇが、
あれ?

二人居る気が…


「俺、帰れって言わなかったっけ?高杉」


「…寒、布団…やめ…」


「起きろコラ、何二度寝しようとしてんだよ!」


「…セェーよ」




「お前もだ神威!!なんで一緒になって寝てんだよ!口にクリーム付いてますけど!全然微笑ましくねーから!つうか人の布団の上で食いモンくっただろ!やめろよな!俺そういうとこデリケートだから!」


なんだかわからんが巻くし立て叩き起こそうとする坂田と布団にもぐって出てこない誰か


部屋にあがって浮かれていたが

そうだ



俺はアイツを全然知らねぇ



怒ってはいるが、俺には親しげにじゃれてるように見えて


たかが部屋一つ向こうとで、俺は蚊帳の外のような…






(一気に欲張りすぎだ…)



ちょっとの事で焦る自分が嫌になった





(甘ェ…)


甘ったるいイチゴ牛乳は一口でまたテーブルに戻した
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ