□今日も明日も10
1ページ/3ページ


たとえば

土方さんに好きな子が居たとしても、
物凄く可愛い彼女が出来て、挙げ句に紹介までされたとしても、
俺は笑って「可愛いですねー。」「美男美女っすねー」なんて適当な事を言って笑えたと思う。


(多分ね)



でもそれは、相手が女の子だった場合。

自分の気持ちは隠して仲のいいバイト仲間を演じれば傍にいることもできる。



(女だった場合!!)





「ジミー君、目ェわらってねんだけど」

目の前で鼻をほじる男
俺は雑誌コーナーの清掃と整理をしながら三回は聞き返した。またいつもの冗談だと思いたくて。





「イツからすか?」

「2週間前、くらい?」

「それって…」


まったく聞いてないんすけど、土方さん。
あれから中々シフトが合わず会えてもいなかったけど、メールは頻繁に続けていたのに。

"会えない時間がなんとやら"と思ってたのに…。
一人でうかれてバカみたいじゃないか…俺。

(隣部屋って、羨まし…じゃなくて、)


「それ言いに来たんすか?」

坂田さんはジャンプを立読みしながら、まぁな。と短く答えた


「俺、ひきたくないんすけど…」

「銀サンこう見えて独占欲の塊だから。退いてくれー」

サガルだけに。

いらん事まで言われた。


(どうみたって独占欲の塊にしか見えねーよ。)

何を遠慮してなんだろう

あの時二人で帰さなければよかった。
引きずってでも坂田さんがくる前に店から出たらよかった。
そもそも電話にでなければ…この人の話題なんて出さなければ…


(むしろ初めから)

「俺って圏外だったんすかね。」


「俺に聞くな。」


悔しいのは、
坂田さんなら仕方ない
と勝手に頭がこの人を認めてとる事だ。

(マダオなのに…)


それでも心の中にある収拾つかないほどの好きをなかったことにはしたくなかった。


「俺、土方さん好きなんですよね。」

「…だろうな」

「戸惑ったンすけど、最初は。」


「…俺も。」



その後はだまってジャンプを読む坂田さん。


俺は勝手に話した
ペラペラお喋りなのは嫌われる要素になるだろうか

「好きな人ってできたこと無かったんですよ今まで。」

女の子は恋愛に協力者を作りたがる。俺はいつもその役まわりだった。あの三人とつるむと特にだ
性格はひん曲がった問題児ばかりだけどみんな顔だけはいいから。

女の子は可愛いけど、同時に面倒くさいな、なんて思うようになった。





「〜…可愛いって思ったんですよね、土方さんて。」

一人で一生懸命なあの人がすごく気になった。意外に不器用なところも目がはなせなくて、少しからかうだけでむきになったり赤くなったり…忙しい人

考えただけでにやけそうになる。

(いかんいかん。)

一人で勝手語り…と言うより回想に近いものを頭で巡らせ終えた俺がふと坂田さんを見上げると、この人はこの上なくどうでもいい顔をしていた。

(うわ…)

あくまでも興味があるのは土方さんだけらしい。

(こういう人だよね、この人は。)




「この気持ちとか、無駄にしたくないんです、俺。」

「山崎…」


「だから坂田さ「却下。」


…そうですか」

まだ何も言ってないのに
作戦失敗。

軽く舌打ちをした俺に坂田さんは、総一郎君ほどじゃねぇけどお前も十分腹黒ェわ。と頭を掻いた。

沖田さんと比べられるなんて心外過ぎる

「そうだ、今日家遊びに行きますね」

「"俺の家"ならいくらでも。」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ