□どうせなら
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「…キオ


雪男!」





ほんの数分前に気持ち良く眠りに堕ちた僕は
何故か僕のお腹辺りにまたがっている兄の声によって引き戻されてしまった


「…何?…おも…いよ」


重たい目蓋はなかなか開こうとしない


手探りでベッドの脇に置いた眼鏡を探していると耳元がヒヤッとした

どうやら兄が掛けてくれたらしい


「…ありがとう」


ようやく開いた目は
未だ僕に跨る兄さんに向けられた



「な!!」


「これすごくねぇか?」


一気に冴える脳


「ど、どうしたの!?その耳…誰が…」

こんなものを兄さんに与えたのか


兄さんの頭には髪と同色の猫耳


よく見ると兄さんの表情に合わせて動いている


「本物!?」


「なんかよ、生えてきた」



何でそんなに普通でいれるのか

兄さんを降ろし起き上がった僕は、手を伸ばす


「ん!ッア…


…びっくりした」

肩を震わせた兄さんは驚いて自分で耳を触る



「人に触られんのは、

なんか…


そうだ!」


そういってピクピク耳を動かした兄さんはにやりと笑い僕に擦り寄ってきて

「な、近…え?」

後退る僕はベッドの角まで追い詰められた
慌てて手を前に出し兄さんの肩を押し返したがもう遅い

「ニッ!…ィさッ…」

首筋に濡れてザラッとした感触

「…な?舌も猫みたいだろ?」


僕の顔を覗き込んだ兄は舌を出してみせる

「……そうだね」


バクバクうるさい心臓
舐められた首筋に手を宛てる

部屋が暗くて助かった
顔が熱くて仕方がない


「なー、もっかい触ってみてくんねぇ?耳」



子首を傾げて頼む兄
僕は不思議に思いながらも兄さんの両耳に手を伸ばした


フワフワと気持ちのイイ毛並み
どう生えているのかと兄さんの頭を引き寄せ観察する


「……ッン、

ハァ…


ン」


漏れた吐息にビクリとして兄さんの顔を見ると、気持ち良さそうに目を細めて身震いしている


「にッ兄さん、

なんかヤラしいから

…その声はちょっと…」


僕が気まずくなり手を引っ込めると
兄さんに手首を捕まれた



「…もうやめんの?」


切なそうな顔
しゅんと耳も下がっている



「…気持ちいいの?」



「…」

黙ったまま頷く兄

猫耳以前に何かがおかしい…



兄の態度も、



僕もだ。




「おいで」



僕が手を広げると、首に腕を絡ませ抱きついてくる


そのまま頭を撫で、耳を触ってやると、兄さんは肩に顔を埋め籠もった吐息を吐いた

肩が熱い


モゾモゾと脚を動かす兄



どうかしてしまったのは僕の方かもしれない


背中に絡み付く兄さんの膝裏に腕を通しゆっくり後に押し倒しす


「な!ユキッ…オ」


驚いた顔に焦った声





「誘う兄さんが悪い」





そういって僕は兄さんの唇に…





ピ


ピピ


ピピピ…







「……キオ



雪男…



オイメガネ!」

僕を覗き込む兄さん


「…」
手を延ばしたが
届かなかった

(メガネって言った?今はしてないだろ!)
腹ではそんなことを思ったけど口を開くのも嫌になった


「お前が俺より遅いなんて珍しいな」


「兄さん…耳は…」


「耳?何寝呆けてんだよ、弁当できたぞ、さっさと起きろよ」


(やっぱり夢か…
現実とのギャップがつらい)


行くぞクロ。と部屋を出ていく兄




あんなに甘えてきたのに…







……



………どうせなら



「…あと少し…」




もう少し。



クロが兄さんの使い魔になった後の夢

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