□ためしに
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「何しにきたテメぇ…」



部屋に入った俺はとっさに剣を構える


目の前のトンガリ頭が何食わぬ顔で、こんにちは。と律儀に頭を下げたので
つられて俺まで会釈してしまった

どうやって入ったのか、
胡坐をかきコイツが見ていた雑誌は雪男のジャンプスクエアで
汚すと怒られるのは俺なんだぞ!と内心思ったが言ったところで現状は変わらなそうだ



「遊びにきました」


「は?」


「ああ、違うな…
今日は遊んであげません。」


兄上に怒られる
と詰まらなそうに答える
メフィストは怒ると怖いらしい。そこは共感できた
雪男も恐いからな。


どうやら暴れる気はないらしい
コイツはまた部屋をキョロキョロ物色しだした



「すぐに壊れるものはつまらない」



「…知るかよ」
ぼそっとそんなことを言うコイツに俺は率直な感想を言った


「退屈です。そこで思いました

キミなら簡単には壊れない」


いきなり立ち上がったかと思えば、ぴょーんと言いながら目の前まで来たコイツ

咄嗟の行動に動けなかった俺はドアを背に挟まれてしまった




まずい





「…ソレは、テメェの加減の問題だろ、」


「はい。


なにか…甘い匂いがする

なんでしょう」


短く納得したコイツは違う質問を。
どこまでもマイペースな奴だ

「あ、ああ、さっきチョコ貰ッンぐ…ァ゙!!」


いきなり首を捕まれドアに押し付けられた


そのまま無抵抗の口にヌルっと舌を奥まで突っ込まれ

あまりの衝撃的な行動に俺の思考は停止したようだ


何、してんだコイツ…
何してんだ俺…

「ンッ…くッ…」

強い力に首が軋み、呼吸もままならない。どうする事もできずに固まっていると、勝手に咥内を動き回った舌は上顎をゆっくり舐めて離れていった


「チョコは好きです。」

「…カハッ!!ッァ゙…っにすんッ…いテェ…」


鉄の味がする…
ぶつかるように当たってきたせいで唇が切れちまった。喉も、ドアにぶつけた頭も痛ェ


キッと睨んでやると、
加減したのに、おかしいな。と首を傾げるトンガリ頭
無表情で何言ってやがる


「俺で試してんじゃねぇよ!」


「次は優しくしてみます。」

また グンと近付けてくるコイツに鞘のまま剣を構える。同じ手食らってたまるか



「そこまでー。」





ピタッと固まった俺達
緩い声のするほうを見ると、
いつの間にか椅子に派手なピエロが座っていた

この古ぼけた寮で見ると、余計に目立つ


「げ、兄上…」
「メフィスト…」


「げ、とはなんですかアマイモン。
いや、奥村君ご迷惑をお掛けしたようで」


「本当にな!」



見張ってはいたんですけどねぇ、とメフィストは呑気に茶をすする。どこから出したんだ
だけど、俺は内心、
心底安堵していて



「さぁ、帰りなさいアマイモン」



「でも…」


「でもも、だってもありません」


「では兄上も……




……はぁ…」

言い合いをするこいつらを見ていると
急に諦めたアマイモンが窓枠に脚をかけた


来るときも窓だったんだな



「私は奥村君に用事があるので。」


「あ?何だよ」

「ならボクも」

聞き返す俺と振り返るトンガリ頭
ニヤっといやな笑いを浮かべるピエロ


「"大人"、の用事です。


さぁアマイモン、行きなさい。」


シッシとアイツを払う目の前のピエロに俺は
仕方なく帰ろうとするアマイモンなんかよりずっと、ただならぬ身の危険を感じた


(と、トンガリ、
…もう少しいてもいいぞ?)

(…いいえ、帰ります)

(だ、そうですよ?奥村君)

(…)


,
次に口を開いたメフィストはこう言う


ためしに、
比べてみますか?奥村くん



俺の答えなんて…






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